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光明 3

「……悪かった」 「それは、何に対しての謝罪だよ。別に、お前が何処の女と寝ようが俺には関係ない事だ」 こんな事が言いたいんじゃないのに、圭斗の腕の中でドロドロとした感情が湧き出て来て自分でも驚くほど冷めた言い方になってしまう。 「……ヤってねぇし」 「今更嘘吐くなよ。ホテルに入ってく所見たぞ。そのせいで俺は……」 そうだ。あの一件が無かったら都築達に拘束されたって一人で倒せたはずなんだ。 「嘘じゃねぇって。あー、でも、やっぱ見られてたんだな。あの女がカフェだと誰かに聞かれるかもしんねぇから、ホテルじゃなきゃ嫌だっつーから入っただけだし」 「そんなの信じられるか」 圭斗に抱きすくめられたまま、その手を振り払う。だが、直ぐに圭斗は怜旺の顎を捕え自分の方を向かせた。 こんな時でもドキドキしてしまう自分が憎い。 だけど、どうしてもさっきの女性との関係が引っかかって素直になれない。 動揺で揺れる怜旺の瞳を覗き込み、圭斗が困ったように眉を下げた。 「勃たなかったんだよ」 「あ?」 「確かに、情報が欲しかったら寝ろって迫られたけど……。自分でもびっくりするくらい反応しねぇの。そしたら、女の方が呆れて、可哀想に思ったのか、ついでに知ってる情報全部ゲロってくれたわ」 気まずそうに視線を逸らして圭斗が言った。怜旺はぽかんと圭斗を見つめたが、今度は我慢できずにプッと吹き出した。 「ははっ、なんだ、そっか……。だっせぇなお前」 「うるせぇなぁ。アンタ相手じゃないとダメだっつーのは分かったから、いーんだよ」 拗ねるように口を尖らした圭斗に今度は正面から抱きすくめられる。 さっきまであんなに渦巻いていたドス黒い感情が靄が晴れたように霧散していくのを感じ、その温かい胸に身を任せて目を閉じた。

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