301 / 342
光明 4
そっと宝物を包み込むように圭斗の自分より少し大きな手が優しく背中を撫でてくれる。やっぱり、この手が好きだなと心から思った。
「……簡単にハメられてるんじゃねぇよ。馬鹿……っ」
抗議の意味を込めて腹に軽くパンチを喰らわせる。
「悪かった……」
「お前にまで裏切られたんだと思って、すげぇ不安だったんだぞ」
「うん、ごめん」
「今まで、一人でも全然平気だったのに……。お前に愛想憑かされたかもしれないって思ったら辛くて……」
もう止めなきゃいけない。こんな弱音ばかり吐いたって、圭斗に嫌な思いをさせるだけだ。
そう思うのに、一度引っ込んだ筈の苦い思いが再びせり上がって来て勝手に言葉を紡いでしまう。
「俺が悪かった」
髪に頬に、こめかみに。優しく唇を落とされて、それだけでささくれ立った心が凪いでいくのが分かってしまう。
「もう勝手な事はしないって誓うから」
そっと手の甲に柔らかく口付けられ、熱の籠った瞳に射抜かれる。
「絶対、だぞ?」
「あぁ……約束する」
「ん……なら、いい」
少し背伸びをして圭斗の首に腕を掛け、踵を上げて口唇に自分のそれを重ねた。圭斗は一瞬驚いたようだったが、直ぐに嬉しそうに目を細めると、背中に回していた腕で怜旺を抱き込み角度を変えて何度も口唇を重ねて来た。
圭斗の熱が欲しくて、貪るように夢中で舌を絡める。圭斗の手が腰に回り、力強く引き寄せた。怜旺も圭斗の首にしがみ付き、足に力を入れて爪先立ちになる。
「んっ……んぅ……」
口付けに夢中になっていたせいで上手く息が吸えずに少し苦し気なくぐもった声が鼻から抜ける。でも、それすらも心地よくて圭斗のキスに懸命に応える。
段々と腰の力が抜けて来て、すがりつくように背中に爪を立てた時、ようやく口唇が離された。二人の口を繋ぐ銀糸がプツリと途切れる。
「……は……っ」
だが、圭斗は怜旺の身体を気遣ってか、それ以上の手を出そうとはせずに身体を離そうとする。
ともだちにシェアしよう!