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決意 10
「アイツ……やっぱ絶倫だな」
正直、もう何回したのか覚えてない。ベッドへ雪崩込んで、激しく求め合った事だけはぼんやりと覚えているが。
熱いシャワーを浴びながら、怜旺は溜息交じりにそう呟いた。そして鏡に映った自分の身体を見て思わず赤面する。
身体の至る所に情事の名残が色濃く残されており、嫌が応にも昨夜の情交を思い起こさせて一気に顔が熱くなる。
「付けすぎだろ……アイツ」
嬉しい様な恥ずかしいような複雑な気分になりながら、怜旺はシャワーを止めてバスタオルを手に取った。
昨夜は無我夢中で気付かなかったが、腿の内側や腹、首筋など際どい場所に付けらられたそれはひどく淫らで官能的な模様を作り上げていて、そのあまりの卑猥さに思わず息を飲む。
「ったく……これじゃ暫く人前で服は脱げねぇな……」
今が冬で良かった。そう思いながらシャワールームを出て、圭斗に強引に押し付けられたハイネックのトップスとスキニーパンツに着替えると、怜旺は髪を拭きながら部屋に戻った。
少しばかり大きいが、自分が着ていた服は見るも無惨に引き裂かれて使い物にならなかったし、あの時間に開いている店も無かった為、圭斗の服を借りざるを得なかった。
動く度に洗剤の良い香りがして、なんだかくすぐったい。
彼の両親が不在だったのは不幸中の幸いだった。
圭斗はどうせ戻ってこないからゆっくりしてていい。なんて言っていたがそう言うわけにもいかない。
こんな早朝に担任が家にいるなんてどう考えたっておかしい。
面倒なことになる前に出来るだけ早くここを後にした方が良いだろう。
ご両親には本当に悪い事をしたな、と多少罪悪感に駆られるが、もう今更だ。
「椎堂」
部屋に戻り未だにベッドの上で丸くなっている布団の上から声をかけると、圭斗は眠そうに目を擦りながら顔を上げた。
「少し早いが俺はもう行くから。お前はゆっくり支度して遅刻せずに来いよ」
「ん……わかった……」
寝惚けた声で返事を聞きながら、怜旺は圭斗の金髪をくしゃりと撫でた。そして、その頬に軽く口付ける。
この様子だともしかしたら1時限目には間に合わないかもしれない。まぁ、昨日の今日だからそれくらいは大目に見てやろうか。
なんて、流石に甘すぎるだろうか?
思わず緩みそうになる口元を押さえつつ、1時間後に目覚ましをセットして、圭斗の家を出た。
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