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不穏の足音
ところが、圭斗は学校に来なかった。2時限目になっても、3時限目になっても姿を現す気配は一向になく、昼休みになっても連絡の一つもない。
いくら起こしても起きなかったとは言え、流石に1時間もすれば起きて支度をするか、もしくは連絡を入れてくるはずだ。
それが来ないという事は……。
「たく、サボりやがったな……あいつ」
こっちは腰や喉が痛くても無理して授業に出てると言うのに……。
怜旺は小さく舌打ちするとスマホを手に取り、圭斗のスマホに連絡を入れた。
しかし、いくら待ってもコール音ばかりで一向に圭斗が出る気配はない。
もしかしてまだ眠っているのだろうか? それとも、何か出れないような事情でも出来たか。
昨夜、ちゃんと真面目に授業を受けると約束したばかりなのに早速反故にするとはいい度胸だ。
「ったく……。あの馬鹿。後で説教だ」
仕方なく一旦電話を切り、数分経ってからまた電話をかけ直す。
すると、今度はコール音が鳴る前にふつりと通話が繋がった。
「おい椎堂! てめぇ何……」
『久しぶりだな、小さき百獣の王。……いや、獅子谷怜旺君』
「!?」
電話に出たのは圭斗では無かった。聞き覚えの無い重低音が怜旺の鼓膜を震わせザワッと背筋が粟立つ。
おかしい。自分は確かに圭斗の番号に電話を掛けたはずだ。
それなのに何故、他の男の声が聞こえ、しかも自分のフルネームを知っている?
嫌な予感がして、スマホをぎゅっと握りしめる。
「誰だ、お前」
胸のざわめきが止まらず、声が自然と低くなる。
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