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不穏の足音4

新港に辿り着いたのは、もう薄闇が降りる時刻だった。 岸壁に沿って、係留されている漁船、ボートなど何艘もの船が揺れている。 あれから、あの男からの着信は無い。  倉庫と言っても沢山あるが一体どれだろうか? 埠頭は広い。 一つ一つ回っている時間は無さそうだ。 可能性があるとすれば、以前小春が呼び出されたあの倉庫だが……。 焦燥感に駆られながら、もどかしく走る。こんな事なら、もう少し運動しておけば良かった。 息を切らして走っていると、誰かに肩を叩かれて振り向いた。 「八神!」 「圭斗はこっちです。先生」 「な、なんでお前……」 「すみません。俺……やっぱり千尋の事がどうしても気になって、今朝学校に行く前に家の側まで行ったんです。そしたら、アイツ知らないオッサンに連れてかれて……。アプリで調べたらここに居るって表示が出たから来てみたら、千尋が圭斗と一緒に中に入って行くのが見えて。それで――」 「そう、か」 辺りを警戒しながら、亮雅から大方の事情を聞き、頭が痛くなった。 やはり、都築とあの男は繋がっていたのかと思わず舌打ちする。 「……八神。一つ聞いてもいいか? お前、都築がもう元には戻らない程腐ってたら、お前はどうするんだ?」 出来れば、この質問はしたくはなかった。だが、こんな所まで一人で来た八神にそれ相応の覚悟があるのか否かを問わずにはいられなかった。 少しでも迷いが見て取れるようならこの場で追い返すつもりでいる。 そうでないなら……。 だが、怜旺の問い掛けに、八神は猫のように吊り上がった瞳を真っ直ぐ怜旺に向けて言った。 「その時は……。俺がこの手で制裁を加えます」 その迷いのない眼差しは、以前似たような事を尋ねた時とは比べ物にならない程強い光を放っており、彼の覚悟が本物である事を雄弁に語っている。 どうやら、完全に吹っ切れたようだ。 「わかった。都築はお前に任せる。頼んだぞ」 「はい!」 握った拳を突き合わせ、八神は力強く返事をした。 もうすぐ陽が暮れようとしている。約束の時間は目前に迫っていた。

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