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襲撃 3
「なに笑ってやがる! 調子こいてんじゃねぇぞコラ!」
「っ、八神!!」
男の一人が亮雅目掛けて振り下ろした鉄パイプを咄嗟に拾い上げたナイフで受け止め、その反動で手の平に焼けるような鋭い痛みを感じて怜旺は顔を顰める。
「ちっ、くそ……切れたか」
「ちょ、おい!!」
慌てる亮雅を制止して、怜旺は血を吸ったナイフを床に放りなげると、間髪入れずに男の腹に蹴りを入れ、鉄パイプを奪い取り、流れるような動きで背後から殴りかかって来た男のわき腹をフルスイングで殴りつけた。
「ぐ、は……ッ」
鈍い音を立てて崩れ去る二つの山を足蹴にし、手の平から滴る血液をぺろりと舐め上げ、怜旺は今までに見せた事がないくらい凶悪な笑みを浮かべて、愉しそうに呟いた。
「次はどいつだ?」
「ひぃっ!」
薄っすらと差し込む月明かりに照らされた黒髪は冷たい炎のように揺らめき、飛び散った血液が怜旺の白い肌を朱色に染める。
ゾッとするような冷酷さと美しさを孕んだ怜旺の表情にはまさに鬼神のよう。
そんな怜旺の炯眼に射竦められて男達は一斉に息を呑んだ。
「ハハッ、凄いな……。現役を退いて久しいのに見事な戦いっぷり。益々お前が欲しくなったよ。小さき百獣の王」
水を打ったように静まり返った沈黙を、恍惚とした声が破る。
そこには、腰を抜かした都築を羽交い絞めにし、怜旺達を見下ろすように立つ怜司の姿があった。
都築の首元には鋭いナイフが押し当てられ、少しでも動けばどうなるかなど、聞くまでもない。
「千尋……っ! てめぇ!」
「動くな小僧。下手な真似したらどうなるかくらいわかるだろう?」
「ひっ」
都築が小さな悲鳴を上げる。ナイフはぴたりと喉仏に当てられたまま、引く素振りは微塵もない。
「八神。此処はアイツに一旦大人しく従え」
「っ、くそ……っ」
怜旺に宥められ、悔し気に歯嚙みしながらも亮雅は震える拳を下におろした。
「随分と聞き分けのいい飼い犬だな」
「うるせぇ。ウチの生徒を犬扱いすんな」
「それは失礼。でも、今はそれよりもやるべき事があるだろう? このナイフは俺が少し手を添えただけで、君の大切な生徒の喉を簡単に切り裂く事が出来るんだ。わかったら、その手に持っている物騒な物を床に置いてもらおうか」
スッと感情の無い冷酷な瞳が眇められ、怜旺は思わず顔を顰めた。
チラリと圭斗の方に視線を向ければ、まっ直ぐこちらを見つめる視線とぶつかった。
そのすぐ横には真っ黒いフードを被った男が立っている。中肉中背で、背格好は男と変わらないが、目深に被ったフードのせいでどんな表情をしているのかまではわからない。
武器は持っていないようだが、強さがわからない以上油断はできない相手だ。
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