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真相

「……チッ」 小さく舌打ちを零して、怜旺は持っていた鉄パイプをその場に落としゆっくりと手を肩の高さまで上げた。カランと乾いた音を立てて地面を滑るのを見て、怜司は満足そうに冷たい笑みを零す。 「自分の仲間を脅しの道具に使うなんて、男の風上にも置けねぇ。久しぶりにやべぇ奴と戦えると思ってたのに、ただの卑怯者だったとはな。ガッカリだよ」 「仲間? 笑わせんな。 こんな弱っちい役立たずのガキが仲間なわけねぇだろ。頭はキレそうだと思ったから少々利用させて貰っただけだ。お前を見つけ出してくれた事は褒めてやるが、もう用済みだ」 「そ、そんな……っ」 冷酷な怜司の声に、都築の瞳に絶望の色が宿った。 「クソ……ッ! テメェ……」 「八神、落ち着け。気持ちはわかるが、今感情的になったら相手の思うつぼだ」 「でも……」 今にも殴りかからんばかりの亮雅を宥め、怜旺は真っ直ぐに目の前の人物を睨みつけた。その強い眼差しに思わずゾクゾクと這い上がる興奮を隠すように怜司は恍惚とした笑みを漏らす。だがそれは一瞬の事。すぐさままた冷たい仮面に戻り、感情の読めない瞳が怜旺を射抜いた。 「……一つ聞きたい。てめぇの目的はなんだ。俺を引き入れて何をさせようとしてる」 「復讐を……したくてね。俺の大事な家族を奪った、あいつらに」 「復讐?」 「あぁ。俺の兄貴はトラック運転手だった。もう20年以上前になるが、過密スケジュールが祟って居眠り運転をして、飛び出して来た女を轢き殺しちまったんだ」 「……ちょっと待て……それ、まさか……」 男の声を聞いて全身の血が引いていくのがわかった。 だって、今の、その話は――。 「ガキを助けたいがために飛び出して来たって、馬鹿な女だ。そのせいで兄貴は――」 「く……っ!」 カッと頭に血が上り、思わず怜旺は拳を振り上げていた。 だが、怒りに我を忘れそうになったその一瞬。怜旺よりも先に黒いフードの男が怜司の手からナイフを飛ばし、不意を突かれた男の腹に拳をめり込ませようとする。だが、スピード感が無い上に無駄な動きが多く、逆に腹に強烈な蹴りを食らって膝から崩れ落ちた。  その隙に都築奪還を試みようとしたのだが、都築の首をがっしりとホールドしている男は、そんな隙を与えるはずもなく、冷めた目で呻く男を見下ろしている。

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