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亮雅SIDE

「千尋……っ!!」 都築へと銃口が向けられる気配を感じ、気付いたら勝手に身体が動いていた。 無我夢中になってその勢いのまま都築を突き飛ばした瞬間、二発の銃声と共に、左の脇腹と、左足に焼け付くような激しい痛みが走った。 「ぐ……ッ!!」 「亮……雅くん……? な、なんで……」 何が起きたのか、理解が追いつかないのか、真っ青な顔をした都築が目を見開いて俺を凝視する。 よかった。どうやら彼に怪我はないらしい。 ほっと内心で安堵の溜息を洩らしたのもつかの間、傷口からから溢れた血液が服を貫通しジワジワと侵食していくのが自分でもハッキリわかった。 「亮雅くん、血が……! なんで…僕なんか、庇ったんだよ!」 「なんでって……。好きなヤツ守れないなら、男じゃねぇだろ。 お前に、怪我がなくて良かった……」 左足は感覚が既になく、痛いというよりは熱いと感じる程の激痛に身体が震え、脂汗が額から滴り落ちてくる。 痛みに顔を歪めながら震える手を伸ばし、そっと都築の頬に触れると、ポタリ、ポタリと止めどなく涙が溢れ出し、都築の白く滑らかな頬を伝い落ちて行くのがわかった。 「好きって……僕はキミに酷いことばかりしてたのに……」 「ハハっ、相変わらず……っ、泣き虫だな、お前……。んな顔、すんなって……っ。俺が勝手にやった事なんだから……ッ」 「亮雅くん……」 涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔をした都築の頭をクシャリと撫でる。 「ごめんな。お前がおかしくなっていくの……気付いてたのに。もっと……早くに全力で……止めれば、よかった」 段々と息苦しさを感じ、呼吸をするのも億劫になって、全身の血の気が引いて行くのがわかる。手足が冷えて、指先が痺れる。 「おい! 都築テメェ! 泣いてる暇があったら止血手伝え!! 早く!!」 「う、うんっ!!」 ゆっくりと遠のいていく意識の中、圭斗がいつになく青い顔をして大声で何かを言っているのが見えたが、何を言っているのかまではわからなかった。 もう、唇を僅かに動かすだけでも辛い。 ただひたすら、手を握りながら自分の名前を呼び続ける都築の泣き顔だけが、ぼんやりと頭の中に響き渡り、その辺りで亮雅の意識はふつりと消えた。

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