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許さない!
響く2発の銃声と共に、どさりと倒れる音がして、ハッとしたように我に返る。じわじわと広がっていく血だまりを見て熱くなっていた頭の芯がスッと冷えていく。
一体、何が起こった? たった今まで背中を預けて戦っていた男が、自分の目の前で撃たれ、倒れこんだ。
「亮雅!!!」
事態を把握した圭斗が血相を変えて走り寄る。倒れた亮雅の側には顔面蒼白の都築の姿。
「チッ、外したか」
忌々しい声がしてハッとする。顔を上げると、そこには再び銃を構えた怜司と、圭斗達を庇うように虎徹が立ち塞がっているのが見えた。震えるその手には先ほど圭斗が投げて寄越した果物ナイフが握られている。
「無関係な子供たちを巻き込むのは止めろ!」
本当にアレは自分の憎んだ父親なのだろうか。母が亡くなって以降、生気を失い浮浪者のよう酒に溺れていた父と同一人物だとは思えない。
もしかしたら、これが本来の父の姿なのかもしれない。
怜司はさっき、父親をヤク漬けにしたと言っていた。最愛の妻を亡くし、精神的に弱っているところを怜司に付け込まれ、唆されたのだろう。
父親のしたことは到底許すことは出来ないし、真相を知って自分が受けた心の傷が癒えるわけではないが、そのすべての元凶は怜司にある。
そうだ、この男が……。都築だって、この男に唆されなかったらきっと、一連の事件を起こさなかった筈だ。怜司さえいなければ、こんな悲しいことは起きなかった。
コイツさえ、いなければ――!!
カッと頭に血が上ると同時に、今まで押さえ付けていたドス黒い感情が腹の中でうねりを上げ全身を駆け巡っていく。
「許さねぇ……」
ポツリと零れた声は、自分でも驚く程に低く、怒気をはらんだものだった。
周囲の空気がびりびりと震え、燃えさかる怒りがじわじわとその領域を広げていく。
腹の奥底から沸々と煮え滾る憎悪のままに、身体の奥から溢れ出す全ての力を右手の拳へと集約させていく。
一瞬にして沸き立つドス黒いオーラに気圧されたように、怜司が一歩後退るのと、怜旺が力強く床を蹴るのはほぼ同時だった。
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