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許さない 3
「う……っ……くそ……っ」
「アンタの背負って来た苦しみも、辛さも全部知ってる。だから、これ以上自分の心を傷付けるような真似はするな」
髪を梳くように圭斗の手が動き、怜旺の身体を支えていた腕に僅かに力がこもる。
「全部、受け止めてやるから……。もう、一人で苦しまなくてもいい」
髪の中に埋まった彼の指がとても熱い。自分を抱く腕が微かに震えているような気さえする。
何故だろう。圭斗の言葉を聞いていると、先ほどまで荒れ狂っていた感情が嘘のように凪いでいくのを感じる。
「何なんだよ……お前……」
漸く落ち着きを取り戻して小さく息を吐き出すと、怜旺は顔を歪ませて圭斗にしがみ付いた。
背中を撫でる大きな手のぬくもりや、圭斗の着ているシャツの仄かな匂い。触れている場所から伝わる彼の温もりに包まれて、張りつめていた糸がプツリと途切れてしまったかのように全身の力が抜けていき、そのまま圭斗の肩に顔をうずめた。
泣いている顔なんて見せたくなくて、後から後から溢れて来る涙を圭斗の胸に顔を押し付けて拭うと、圭斗は何も言わずに優しく抱き返されてぽんぽんと背中を撫でてくれる。
それが妙に恥ずかしいし、子供扱いをされているようで悔しいが、圭斗の胸は温かく、心を落ち着かせる。ゆっくりと背を撫でる手もとても優しい。
「何だよ……お前。何でそんな……ガキ扱い……」
「好きな奴を甘やかしたいって思っちゃ悪いかよ?」
「……っ! なんでお前っていつもそんな恥ずかしいこと言えんだよ」
悪態をつきつつも、耳まで熱くなるのが自分でもわかる。
涙を拭いながら離れようとした身体は、逞しい腕によって引き戻された。懐深く抱きこまれ、優しい感触にまた泣いてしまいそうになる。
「あー……。お取込み中悪いんだが、ちょっといいか?」
コホン、と声がして顔を上げると、いつの間にやって来たのか、父が痛む腹を押さえつつ少し困った顔をしながら立っていた。
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