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終焉

「お、親父……っ」 「なに?」 圭斗は嫌そうな顔を隠そうともせず、怜旺を庇うように父との間に割り込んで睨み付ける。 「誤解しないでくれ。俺はお前達に何かをするつもりなんて無い。……その、此処から少し行った所にある広場にもうすぐ救急車が来る。だから、そこまであの子を運ぶんだ。幸い、急所は外しているようだし、出血量の割には傷は深くなさそうだ。応急処置で止血も上手く行っているが、ずっとこのままと言うわけにはいかないだろ。後の事は全部俺が何とかする」 「 ……なんで親父にそんなこと……」 「行こう。その方がいい」 抗議をしようとした怜旺を制し、圭斗は父の前に一歩出る。 「なにを、企んでるんだ?」 「何も。どうせ、コイツは虫の息だ。ほおっておいても時期に死ぬ。さっき、警察と救急車を呼んだから、救急隊員には、家に帰ろうとしていたら、突然大掛かりな喧嘩に巻き込まれたとでも言いなさい。間違っても自分たちが関わっているなんて口にするな。お前たちは、ただ、通りかかっただけ。怜旺の怪我は生徒を助けようとして受けた傷。そう言う事にしておくんだ」 父親は、諭すような声色でそう告げると、寂しげな眼をして、怜旺の頭の上にポンと手を乗せた。 「……こんな事で、俺がお前にした事の罪が軽くなるわけじゃないのは重々わかってる。知らなかったとはいえ、俺の心の弱さがこういう結果を招いたんだ。……だから、許そうなんて思わなくていい。最期くらい……父親らしいことさせてくれないか」 「……ッ、なに……言ってんだ。何処までも自分勝手なヤツだな! 何をいまさら父親面してんだよ! 俺は……俺はっ! ずっとアンタの事を……!」 「怜旺!」 頭にのった手を振り払い、嚙み付くような勢いで言い返すと、圭斗に名前を呼ばれて強く腕を摑まれた。振り返ると、心配そうな表情をした圭斗と視線が絡む。

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