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終焉 3
あれからすぐ、亮雅は病院へと運び込まれ、手に怪我を負った怜旺も一緒に搬送先で治療を受けることになった。
幸いにも、亮雅の傷はそこまで深くは無かったようで、足の神経や筋等に損傷が無いかを精密に検査した所、異常は全く見受けられず、傷口が塞がれば、入院生活もそんなにかからないだろうとの事だった。
「取り敢えず……良かったな……」
処置を終え、病室に移された亮雅を見てホッと息を吐く。思ったよりも顔色が良くて安心したのもつかの間、ドクターと入れ替わるように亮雅の両親が血相を変えてやって来て、二人揃って怜旺に頭を下げた。
「先生。ありがとうございます! 息子を救って頂いて、本当に感謝しています。なんとお礼を言っていいか……」
「いえ、そんな……。私は何もしてませんから……お礼なら私より、椎堂君に言ってやってください」
本当にそうだ。あの時、自分は頭に血が上っていて、亮雅に関しては何もしてやることが出来なかった。
止血の指示を出し、適切な処置を施したのも、怒りの感情のままに怜司を殴り殺そうとした自分を全力で止めてくれたのも圭斗だった。
圭斗が止めてくれなければ、今頃警察の世話になっていたのは父親では無く自分だったかもしれない。
「……親父……」
涙ぐみ、亮雅の手を握って寄り添う彼の父を見て思う。
もしも、撃たれたのが自分だったら、あの父親はこんな風に寄り添って、涙してくれるだろうか?
いや、止めよう。考えたって仕方のない事だ。怜旺は静かに首を振って不毛な妄想するのをやめ、そっと病室を後にした。
少し大きめの黒いパーカーは大嫌いな父親の匂いが染みついていて何とも言えない複雑な心境だったが、着替える暇もなかったので、こればかりは仕方がない。
あの倉庫から出る直前、着ていた服を半ば強引に父親の物と取り替えられてしまった。
流石に怜旺が血まみれのシャツを着ていては怪しまれるとでも思ったのかもしれないが、そういう所で妙な気遣いを見せるところが本当にムカついて仕方がない。
結局、警察にも救急隊員にも、父親に言われた通りの証言をした。父親に罪を擦り付けてしまった罪悪感が付きまとうものの、そうすることが自然なような気もして、納得いかないながらも今のところはこれで良かったのだろうと無理やり自分を納得させた。
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