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終焉 4
「……終わったな」
「あぁ」
病院を出て、近くにある川岸の遊歩道を圭斗と二人でゆっくりと歩く。
川面に煌びやかなネオンや外灯が反射し、橋の上から見下ろす街は幻想的なイルミネーションの光で彩られている。
「まだ実感湧かねぇな……。今日は色々ありすぎたせいかな……」
「俺も」
欄干に凭れ、小さく息を吐きながら空を見上げる。父親の事を思えば思うほど胸が苦しくなるのは事実だが、それでも少し肩の荷が下りたような気がするのは、圭斗が隣に居てくれているからだろうか。
ちらりと隣にいる彼を見上げると、圭斗は水面では無く怜旺の方を見ていた。心なしか少し不機嫌そうな顔をしているような気がするのは気のせいじゃないはずだ。
「何だよ……人の事じっと見て」
「いや。……その服、似合ってねぇなと思って」
「仕方ねぇだろ。あのオヤジが身ぐるみ剝がしてったんだから」
確かに、黒いシャツは持っているがパーカーはあまり着慣れない。ワンサイズ大きいのは仕方ないにしても、もともと筋肉が付きにくい怜旺には肩幅も袖丈も少し大きい。
「コレ、着てろ」
「あ?」
圭斗は着ていたジャケットを脱ぐと、なかば乱暴に怜旺の方に投げて寄越した。
「アンタが他所の男の匂い付けてんの、正直気に食わねぇから」
「何だよソレ……。親父にヤキモチか」
「悪いか」
むすりと拗ねる圭斗を思わず可愛いと思ってしまうのは、惚れた弱みと言うヤツだろうか。
彼の嫉妬や独占欲が嬉しかったなんて言ったら、きっと調子に乗るだろうから、口には出さないでおくけれど。
「……ばーか」
ジャケットを羽織り、照れ笑いをしながら圭斗に身体を寄せると、腰に手が回されてギュッと抱き寄せられた。
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