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第2話
《凪side》
最近気になっている事がある。
気になるヤツがいる、といった方が正しいだろうか。
気になるといっても、これから話す話は恋とか愛とかそんなも甘いもんじゃない。
俺と同じクラスの鳴宮 湊(なるみや みなと)。
2年で同じクラスになってもう3ヶ月だが話した事はまだない。
それというのも鳴宮は俺と違ってわりと品行方正、俺はサボリ魔。
別に不良になりたいわけでもなければ悪いことをしたいわけでもない、ただ面倒、それだけ。今でいうサトリ世代ってやつか。
勉強に関しては、教師である両親の血筋なのか昔からできる方で、授業に出なくても自宅学習である程度はできる。
友達も別にいないわけじゃない、1年の頃は結構男友達とつるんでいたし、2年になってそいつらと離れてしまったから、今はゆるくやってるだけで、話しかけられたら話す程度。
身長が178センチもあるからか舐められる事も苛められるこ事もなく、まぁ地味に過ごしている。
そんな面倒くさがりで何にも興味を示さない俺が、
最近一人のヤツの事が気になっている、
それが鳴宮湊。
さっきも言ったが品行方正。
1年の頃は知らないが、先生やクラスメイトにも評判がいい。陽キャってわけでもないけど物腰も柔らかく人当たりがいい、そんな感じ。
それに加えてサラサラの黒髪に目鼻立ちもくっきりというか、多少女顔な所が地味に女子人気も高いが、身長がちょっと低いせいかあんまり女子から恋愛対象にはされてない気はする。160ちょいくらいか?
いや、よく観察してるな俺。
そんなこんなで全然俺と共通点なんかないコイツなんだが
最近妙なことに気づいてしまった。
というのも、鳴宮は体育の着替えを絶対に教室でしない。
他のやつは気づいているか分からないが、
休み時間のたびに別館のトイレに行って着替えているようだ。
それに気づいたのは俺が別館の教室でサボっているときに隠れるように走っていく姿を見かけたからなんだけど。
それから何度かそれを見つけて、無意識に目で追うようになってしまった。
何か理由があるのか、
まぁ裸を見られたくないなんて思春期だからないこともないだろうが、怪我とか手術の跡があるとか…なんかコンプレックスでもあるのか…キスマークでもあるとか?
女を抱いてる鳴宮、想像できねー!
そんなこんなで謎は謎のまま数日放置していた俺だったが、
たった今空き教室でサボっていた所に、なんと鳴宮湊が入ってきたのだ。
ガラっという音と共に教室前のドアが開く。
使うことのない教室なので、そこには後ろに寄せられた机たちと備品のダンボールが積み上げられ、ある意味備品庫となっている。
急に先生が来たときの為に、俺はいつもダンボールの陰に身を隠してサボっているため、入ってきた鳴宮はまだ俺の存在に気づいていない。
「はぁビックリした、なんで人がいるんだよ、」
紡がれた言葉に見つかってしまったかと思ったが、どうやら違うようで
それはいつものトイレにいる人物に向けた言葉だと気づく。
別にバレた所でなんともないので早々と姿を現せばよかったのだが、入ってきて早々に制服を脱いでいく鳴宮が目に入り身体が固まってしまった。
なんだ、あれ
こちらに背を向け制服のシャツを脱いだ瞬間、
その白く細い身体のあちこちに青かったり、赤黒かったりする痣がいくつもあるのが目に入る。
それだけじゃない、腰や手首には赤く擦れたような跡、引っかき傷、まだ付けられて間もないであろう血が滲んでいる傷もある。
喧嘩?なわけないか。だとしたら虐待?
予想もしていなかった展開に動けないでいるうちに鳴宮は体操服の上着を着替え終わり短パンに足を通していた。
これは見なかった事にしなければ、そう思った瞬間
「うわっ」
俺の脇にあったダンボールから傾きかけていた備品が派手な音を立ていくつか頭めがけて落ちてきた。
やば、
目が合った。
「あの、」
そう俺が話しかける前に鳴宮は持っていた着替えを握りしめ廊下に飛び出していった。
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