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ある日の夜の話-C-

「んーーー……!」  テラスに備えつけの露天風呂につかりながら、思いっきり伸びをする。  しがないサラリーマンである自分──朝野 洋佑(あさの ようすけ)は、二週間ばかりの出張の後の休暇を堪能していた。  街中とは思えないくらい静かなテラス。季節の花々が飾られており、開催しようと思えばちょっとしたパーティーを開けそうな広さもある。  動けばちゃぷちゃぷと音を立てる湯の温度も心地よい。ふぅ、と大きく息を吐き出すと、今度は湯船の縁に肘をつくように姿勢を変えてもたれかかる。 「しっかしいいのかねぇ……こんないい部屋」  予想でしかないが、自分の月給と同じかそれ以上はするのではないだろうか。  人の好意に無粋であるとは承知しているが、それでも気にはなってしまう。 「……洋佑さん。ここにいたんだ」  背後。開けっ放しだった室内へと続く扉の方から声が聞こえた。顔を向けないまま、ひらひらと手を振る。 「一足先に頂いているよ」  返事はないが、こちらへと近づく気配。ちゃぷ、と湯が揺れて中に入ってきたことが伝わるが顔は向けないままでいると、するりと伸びた腕に後ろから抱きしめられた。 「よかった。洋佑さんのための部屋だから、楽しんでくれたら嬉しい」  言葉通り。出張の後の休暇をのんびりとすごそう、とこの部屋を用意してくれたのは、この男だ。 ──結城 佑(ゆうき たすく)  元々は洋佑の勤務する会社に新入社員として来た男だが、なんだかんだあって今は退職。現洋佑の恋人であり、同棲相手でもある。  今回の休暇の予定は全部自分が組みたい、というから任せたのだが、想像以上の豪華さでちょっと腰が引けている──のは胸の内。 「って、お前、服着たままじゃないか」  ここで初めて顔を向けた。  己を抱く腕の持ち主が、やんわりと笑みを浮かべてこちらを見ている。不安そうだった顔が、ふわっとした笑顔になり心底嬉しそうな表情になった。 ──のはいいのだが。  絡んだ腕に着たままのシャツがはりついている。見えてはいないが、ズボンもおそらく着たままだろう。 「うん」 「うん、じゃなくて…脱いでくればよかったのに」  これじゃ後が大変……と続けようとしたが、頬を摺り寄せられて言葉が詰まる。 「だって、洋佑さんに早く触りたかったから」  こめかみのあたりに鼻先を埋めながらささやかれると、くすぐったくて肩が揺れた。 「だからって……こら、くすぐったい」  濡れたシャツが肌に当たる慣れない感触も手伝って笑ってしまう。佑は動きづらいことを気にする様子なく、何度か深呼吸をしてから、一度離れ、今度は頬を摺り寄せてきた。 「久し振りの洋佑さんだ……いいにおい」  主人の帰宅を待ちわびていた犬のようだ。  ぶんぶんと振り回している尻尾が見えるような気がして洋佑は笑みを深める。 「においって……俺、そんな臭いか?」 「臭くないよ。洋佑さんはいいにおい」  そんな子供のようなやり取りをしながらも、摺り寄せた頬を浮かせると、軽く唇で触れてすぐに離れる。本当にじゃれついている犬のようだ──と、好きにさせていたのだが、そのうち頬だけでなく、顔全体に何度も口づけては離すことを繰り返しながら、抱きしめる腕の力が強くなってくる。 「…ちょ……、と待て…」  これ以上は、と、手を差し込まれ、止められた事でやや不満そうにしながらも顔を離してはくれる。ふぅ、と小さく息を吐き出した後、困った眼で佑を見た。 「このままじゃのぼせる……から…」  こっち、と湯船の縁を視線で指し示すと、意図が伝わったようだ。  腕を緩め体を離す直前に名残惜し気に額へと口づけてから、佑は立ち上がった。すぐに湯船の縁へと腰を下ろして笑みを向けてくる。 「…………」 そんな彼の隣へと腰を下ろそうとしたが、腕をつかまれた。 「こっち」  強引な動きで本来座るはずだった湯船の縁ではなく、佑の膝の上に横を向いて座る格好になってしまった。 湯船から出た肌寒さと完全に肌をさらす格好に覚えた羞恥心から、思わず腕で自分の体を抱くと、優しい声でささやかれる。 「寒い?」 「いや…大丈夫。お前は?」 「僕は平気。洋佑さんがいるから」  恥ずかしいセリフをさらっと口に出されて顔が熱くなってしまう。ごまかそうと顔を背けてみるものの、この距離では隠したくとも隠せないのだが。 「…あ、…いや、その。……」  もごもごと口ごもってしまう。あまりにも真っすぐに感情をぶつけられると、どうしていいのかわからなくなってしまうのだ。  原因である佑は気にする様子もなく、また口づけの雨を降らせようと顔を寄せてくる。 「~~♪」  鼻歌でも歌いだしそうな上機嫌っぷり。対照的に洋佑の方は言いたい言葉がまとまらず、唇を開いては閉じてを繰り返してしまう。  そうしているうちに、軽く押し付けてすぐに離れるだけだった動きが、いつの間にか肌を緩くついばむような動きに変化していた。肩を抱いていた腕の位置が腰へと滑る動きに大きく体を震わせる。 「…た、すく……ちょっと…まって……」  弱い声。力なく胸を押して距離を取ろうとするのだが、先ほどと違い、腕が緩む気配はない。 「ごめんね。久々に洋佑さんに触れたら、我慢できなくなっちゃった」  声は優しい。表情も、本当に嬉しそうというか楽しそうというか幸せそうだ。だが、己の体を捕まえる腕の力は緩むことはなく力と熱がこもる。 「洋佑さん───」  吐息交じりに名を呼ぶ声が熱を帯びている。濡れた衣服越しでもわかるほど、肌も熱い。ただ幸せそうだった瞳が熱を帯び、ねっとりと絡みつくような視線に変化していた。  顎へと回された手に顔の向きを変えられてしまい、真正面から視線が重なるとその熱さに一瞬目を奪われる。 「……、──」  名を呼ぼうとした唇が塞がれた。舌先を絡めとられ、もっと、とねだるように顎から後頭部へと手の位置が変化する。  角度を変えながら、深く浅く口の中を探られ、びくびくと肩が跳ねた。すがるものを探してさまよった指先が濡れたシャツに触れ、思わずそれを強く握りしめる。 「ふ、ぁ……────」  散々に口腔を蹂躙した舌がそっと引き抜かれていく。息苦しさと同時、何とも言えぬ寂しさも感じて掴んだままのシャツを引っ張ってしまう。 「……洋佑さん。そんな顔しないで」  目の前にある佑の表情が曇り眉が下がる。本当に困った様子。こんな表情をさせてしまった罪悪感に薄く唇を開いた。 「ごめ……」  詫びの言葉を聞くと、困った表情のまま佑が指を伸ばす。飲み込み切れぬ唾液で濡れた洋佑の唇を指で優しく拭いながら、はぁ、と大きく息を吐き出す。 「………謝らないといけないのは僕の方…だと思う…」 「…………?」  何かためらう様なそぶりに、どうかしたのかと聞こうとした動きが止まる。  一瞬の間の後、背中に固い感触を感じて、驚いて目を瞬かせる。 「た…すく…?」  思いつめたような佑の顔が上からのぞき込んでいる。その背後には夜空。  自分が床に押し付けられたのだと理解したのは、その後。再び伸びてきた腕にのけ反る程に強く抱きしめられ一瞬息が詰まる。 「ごめんね…僕、我慢できそうにない……」  ねとりと耳の縁を舐めながら、熱い吐息交じりにささやかれながら、ぼんやりと視線をさまよわせる。 「ずっと仕事だったし、疲れてるだろうし……優しくしようと思ってたのに」  するりと伸びた指先が、洋佑の性器へと触れる。頭をもたげかけたそれへの刺激に思わず声をあげてしまい、慌てて口を押える。 「…、あ……!……ま、って…──…」  ひくひくと震える先端から滲んだ先走りが、佑の指との間に細い糸を紡ぐ。物欲しげに震える熱に絡んだ指がゆるゆると上下に動き始める。 「ごめん、待てない」  耳を舐りながら、洋佑の性器を扱き上げてくる。やや乱暴ともいえる動きだが、恐怖や痛みよりも快感の方を大きく拾って、性器が昂り、透明な雫に白濁が混じり始めた。  離れてしまった腕を改めて佑の背中へと回し、張り付いたシャツを握りしめる。 「んぅ…──っ、く…や、そこ…だめ…」  的確に弱い部分を攻め立てられて、腰が震える。逃げ出そうとするように身をよじれば、湯がちゃぷちゃぷと音を立てて肌を濡らすが、熱が引くことはない。 「…ふ……、二週間…寂しかった…ずっと、ずっと洋佑さんのこと考えてた」  唾液の痕を残しながら、耳から顎のラインへと舌を這わせる。 「声が聴きたい。触れたい…入れたい、出したい。洋佑さんの中の外も、ずっと僕のものが溢れるくらいにぐちゃぐちゃにしたい」  泣き出しそうな声。容赦なく洋佑を攻め立てて、快楽を煽る動きとは裏腹の弱い声。 同時に、どうしようもない衝動にジーンズ越しに昂ったものを洋佑の体を突き上げるような動きで押し付けてくる。  布越しに感じる熱に我知らず足を広げ、その場所へと触れるよう腰を揺らめかせてしまう。縫い合わせの分厚い部分が、会陰部に当たるたびに背筋を這い上るもの。この先の行為を期待して下腹部がひくつく。 「明日も明後日もずっと、洋佑さんとつながっていたい…………」  離れたくない、と絞り出すような声で囁きながら、顎から首筋、鎖骨を通って胸へと舌を這わせていく。小さく色づいた箇所へと尖らせた舌先がたどり着き、色の変わった個所を確かめるようぐるりと円を描く。 「──は、……洋佑さん…、洋佑さん……っ」  溢れる感情を伝える術を探すように、名前を何度も呼びながら舌を這わせてくる。  そのたびにこくこくと頷き返すのが精いっぱい。すっかり熱を昂らせた洋佑の性器は脈を浮かせ、吐きこぼすものに白濁が混じり始めている。 「た、すく…、も、でる…から、……」  シャツを掴んだ指に力が籠る。自分から佑の手の中へと性器を押し付け、もっと、とねだる動きで腰を揺らしてしまう。 「…洋佑さん、のここ、ひくひくしてる。いきそう?」  胸に唇を押し付けたまま言葉を紡ぐものだから、不明瞭。言いながら丁寧に指先が性器をなぞる。あえて強い刺激を与えないようにと触れていることに気づくと、泣き出しそうに顔をゆがめた。 「い、き…たい、……」  言い終わるのが早いか、焦らしていた指の動きが変わる。嚢から先端まで、弱い個所を一気になぞり上げられ溜まっていたものが溢れ出す。 「……あ、あっ…ふ、……──ア、…は…」  堪える間もなく呆気なく果ててしまった。佑の指だけでなく、自身の腹にまで散った白濁から立ち上る濃密な性の香り。  達した余韻に浸る間もなく、足を大きく開かされた。  抵抗する余力もなく、ぼんやりと視線をさまよわせると、顔を上気させた佑がのぞき込んでくる。自分と同じように興奮しているのだと分かる様を見て、安堵と歓喜とに口端に笑みが浮かんだ。 「…洋佑さん」  何?と言葉を返す余裕がない。が、佑の指先がひたりとすぼまった奥、その中心をくすぐるように動いていることを感じて腰が跳ねた。 「あ、たすく……指、……」  呼吸に合わせて、指の先がつぷりと中へと差し込まれた。久しぶりの感覚に下肢がこわばるが、熱を帯びた肉の壁はようやくに与えられた刺激に動きを阻む程の強さで絡みつく。 「洋佑さんも欲しかったんだ…嬉しい……」  指を包む肉の熱さを感じて、指の動きが大胆になる。二週間振りだというのに、柔らかく溶けたその動きにほんの少しだけ佑の表情が厳しくなった。 「ん──、柔らかい」  ぐちゅぐちゅと指を抜き差しされる動きに合わせて腰が揺れてしまう。恥ずかしさともどかしさとに頭を左右に振る。 「洋佑さん……自分でここ、触ってたの?」 「へ……?」  不意の問いかけに間の抜けた声を上げてしまった。質問の内容を理解しようと眼を瞬かせる。  沈黙の間をどう受け止めたのか、佑はもう一本の指を差し入れてきた。 「ふぁっ……」  みっともなく声を上げてしまって思わず口を手で覆う。二本に増えた指が奥へと潜り込み、たまらず腰をくねらせる。 「だって……ここ凄く柔らかい。お風呂のせい?……それとも、自分でしてたの?」  ようやく問いかけの意味を理解した。佑が来るまでの間に一人で楽しんでいたのかと聞かれたのだ。 「そ、な……して、な」 「本当?」  ぐ、と弱い個所を押え込まれ腰が跳ねる。達したようにびくびくと全身が震える。 「だって……お前がいるのに、一人でする、理由…な、い……」  出張がもう少し長ければ一人でしていたかも知れないが。一緒の部屋に居るのに、隠れて一人でする理由など探しても見つかりはしない。  喘ぎ交じりに応えると、佑の指が引き抜かれた。続けて強く抱きしめられる。 「ごめん、僕……」  言い淀む背中をぽんぽんと軽く撫でてやる。 「本当にお前は甘えん坊だな」 「だって……」  申し訳なさそうな声。大丈夫、ともう一度背中を撫でた後、自分からも腕を回して抱きしめ返す。 「大体俺が先にしてたとしても……その分、早くお前のが突っ込めるんだから、お得じゃないか」 「……やだ。洋佑さんの中に入るのは僕だけでいい。洋佑さんの指でもやだ」  子供のように拗ねる。仕方ないな、と困ったように笑って腕を抜くと、自分の膝裏へと手を差し入れて足を広げて見せる。  勃起した性器からはとろとろと蜜が溢れ、先程まで嬲られていた後孔まで伝い落ちる程。指を引き抜かれ、焦れたようにひくつくそこが外気に晒され羞恥に薄く肌が染まる。 「よ、すけ…さん?」  佑はあまりの光景に動きを止めてしまった。自分だって恥ずかしい。改めて思い返すと、己の格好に更に肌が染まる。 「だ、から……、欲しいのは、お前だけじゃ──、ない」  言い終わるよりも前に佑の手が動いていた。濡れて張り付いたベルトの金具をもどかしげに外し、前を緩めると下着ごと押し下げると、抑えつけられていた性器が飛び出してくる。  露になった性器を洋佑の後孔へと押し当てて深呼吸。 「洋佑…さん」  興奮で掠れた声で名を呼ばれる。続けてぐ、と押し付けられた熱の塊。軽く指でほぐしただけの後孔には大きすぎる質量。 「んっ───、く…ぁ…、…」  ずるりと先端が入り込む。一番太い個所が中を割り開くのを感じると、洋佑は足から手を離し息を吐き出した。 「は、っ……い、た……」  ず、ず、と深くなる結合。佑の手が腰を掴んだ。自分も洋佑も焦って体を傷つけないよう、ゆっくりと、じれったい程の動きで少しずつ腰を進めていく。 「ぁ…た、すく…も、と……」  もどかしさに体をくねらせる。早く深い場所を突き上げて欲しい。中をもっと掻き混ぜて混ざりたい。そんな欲に目を潤ませる洋佑に佑はゆっくりとキスの雨を降らせる。 「だめ…、…洋佑さん、傷つけたく、ない…から」  熱を帯びた吐息が肌にかかるとぞくぞくと全身が震える。額、頬、鼻先、耳、と触れては離れる唇の動きに合わせて声が漏れる。 「…ん、ぁ……」  ずるりと奥深い場所に熱が埋め込まれる感覚。自分の「イイ」場所へ佑の性器が擦り付けられると、ばしゃりと湯が跳ねた。 「は、ぁ……洋佑さんの中…すごく、熱い、…きもちいい」  恍惚とした呟きとともに腰を揺らされる。ちゃぷちゃぷと湯が肌を叩き、滑り、湯船の外へと流れだしていく。 「ひぁ──、ん、や……」  ぱつん、と肌を打つ音に水音が混ざる。腰を押え込まれたままでは自分から動くことが出来ず、突き上げに合わせてふらふらと足先が揺れた。 「いい…すごく、きもちいい……洋佑さん、…洋佑さんっ」  腰を掴む手に力が籠る。奥深い場所に熱を埋め、中を掻き混ぜるように回され、頭の中が真っ白になる。 「ぁ、あぁ…アっ、あ…佑、…待って…」  快感の強さに逃げ出そうともがく体をおさえこまれる。尻が湯船の上に持ち上がる程に奥へと深く押し込まれて、足の先が震えた。 「……洋佑さん、僕も…出す…から…一緒に」  腰を抑えていた指が引きはがされ、床へと。腹の間に洋佑の性器を挟み込むようにして腰を揺らされると、あっけない程容易く達してしまった。  びしゃりと生温い感触。独特の臭気が周囲に満ちるのと同時、己の中にも熱が吐き出されるのを感じて洋佑は背中をのけぞらせた。  それは欲を吐き出している自身の性器を佑の腹へ擦り付ける動きにもなり、また声を上げて体を震わせてしまう。 「……、んっ…、そんなに締め付けないで……」  達すると同時に埋め込まれた性器へと絡みついた肉の壁。吐き出したその奥にあるものまで絞り取ろうとするような締め付けに佑の声が掠れる。 「…そ、んなこと…言われても……」  自分でもどうにもならない。快感の大きさにまだ頭がぼんやりとしているのに、繋げた箇所だけは貪欲に欲を貪り、得たものを腰の奥から背骨の上へと伝えてくる。  一度ぶるりと全身を震わせた佑が改めて覆いかぶさってきた。行為の後特有の倦怠感と幸福感の滲んだ複雑な表情を浮かべながら、軽く口づけては離れ……を繰り返す。  嵐のような熱が過ぎ去った後、外気に触れる肌に少し寒さを覚えて肩を竦めた。 「佑……寒くないか?」 「……ん、僕は平気……洋佑さんは?」 「俺は…ちょっと寒い」  正直に答える。濡れた肌が風に吹かれて冷えていく感覚に眼を瞬かせる。 「……そっか。じゃぁ続きは部屋でしよ?」  あっさりと体を離されると、中に吐き出されたものが溢れてくる。とろりと肌を伝うそれ、手近にあったタオルを濡らして軽く拭ってくれる。 「……、ありがと……って、続き……?」  びしゃびしゃになった衣服をその場で脱ぎだす佑に眼を丸くする。 「うん……二週間分」  脱いだ服を湯船の中に放置した佑は、これで動きやすい、と笑みを浮かべた。改めて自分の身体に腕を回すと、軽々と抱き上げられる。 「…、あ、や……うん。その…俺も……したいけど、さすがに、ちょっと」  寝たい。  とは言えなかった。自分を抱き上げた佑の満面の笑み。嬉しそうに笑いながら改めて頬へとキスした後、先程までの行為が何でもなかったのようにそのまま歩きだした。 「洋佑さん」 「…………ん?」 ────いっぱい、シようね。  屈託なく告げられる言葉は可愛いくもあるが、ある種の宣告でもあり。  どうしたものかと視線を向けると、幸せそうな佑の表情が目に入る。 ────ま、いっか。  なるようになるだろう。そうやってほだされる自分もなんだかんだと甘いのかも知れない。  などと考えていれば、ベッドへと下ろされる。 「……洋佑さん」 「?」 「愛してる」  俺も、と返す前に唇を塞がれた。

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