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89の日-C-
──今日はハグの日だから、ぎゅっとさせて。
そう言いながら笑顔で佑が「お願い」してきたのはつい先ほどのこと。
ハグの日とか関係なく、ぎゅっとされている気はしなくもないが、まぁいいか。と両手を広げたまでは良かった。
「……、……なぁ」
「?」
「「?」じゃない……ぎゅ、っとするんじゃなかったのか?」
最初に両腕を回してきたまでは分かる。
その後、Tシャツの裾から手を中に入れて直接肌を撫でて来た。ハグどころか、今度はベルトを外そうと腕を前に回してごそごそと動かしている。
「……だって。直接触りたい」
なぜか不満げに半眼を向けられた。留め具を外されたベルトがするすると抜かれていく。
「…ぁ、こら……」
フロントボタンを外され、指先が中へと入り込んでくる。ジップが引き下ろされると自然と下に布が溜まり、動きづらさに身を捩った。
「っ、た、すく……」
下着の中に手が入ってくる。直接に性器を握り取られると、流石に声が震える。引き離そうと肩に指をかけたが、つ、と指先が滑る動きに腰が震えた。
「洋佑さん」
ふ、と耳元で囁かれて肩が跳ねる。くちゅりと指の中、捉えられた性器から小さな水音が立ち始める。
「…ば、か……どこ、触って……」
もう一方の腕はしっかりと洋佑の身体を抱いたまま。片手で器用に性器へと刺激を与えながら、耳元やこめかみに何度も唇で触れてくる。
いつの間にか肩を掴んでいた指が佑の首へと回されて、縋り付くように体を摺り寄せてしまっている。
「……ここ、ぎゅっとされるの……好きだよね」
言いながら弱い部分へと指を這わせて強めの刺激を与えてくる。大きく声を上げてしまい、それを隠すように佑の首筋へと顔を埋めた。
「……る、さい……」
精一杯の悪態。それすら、可愛い、と囁かれて洋佑は思わず眼を閉じた。既に熱を集め昂ったものから、溢れる先走りがぐちゅぐちゅと音を立てて、佑の指だけでなく下着まで濡らしている。
「、も……出る、から……~~~~ッ!」
達する直前。ぎゅ、と根元を指で戒められて動きが止まる。ひくひくと震える先端に薄く白濁が滲み、限界を伝える熱が佑の手の中で脈を強めた。
「洋佑さん…気持ちいい?」
佑の声が熱を帯びている。いまだジーンズを履いたままの股間を押し付け、布の下の昂りを伝えるかのように、指で戒めたままの洋佑の性器へと擦り付けてくる。
「……ば、か…汚れる……」
悪態をつきながらも、洋佑は縋り付く腕に力を込めた。達することのできないまま、敏感な個所へと刺激を与えられると、我知らず腰が揺れる。
露になった胸を佑のシャツへと擦り付けて、布やボタンの堅い部分を探して体を揺らしてしまう。
「……腰、揺れてる……よ……?」
指摘されると恥ずかしさで顔が熱くなる。止めたいと思うものの腰を揺らすのを止められない。出したい──そのことだけが頭の中を駆け巡る。
「……いいよ、出して──その後、僕のを入れさせて」
戒めていた指が緩む。声にならない声を上げて、洋佑は溜めていたものを吐き出した。
どろりと佑の指だけでなく、ジーンズや床へと白濁が伝い落ちていく。すり、と佑の指に擦り付けながら、恍惚とした表情を浮かべながら溜めていたものを吐き出していく。
「ぁ、ふ……」
濡れた指が嚢の奥を這う。つぷりと突き立てられた指、膝が崩れそうになると同時に、後ろの壁へと押し付けられて身動きが取れなくなる。
足元にまとわりついていたズボンも下着も床の上に散らばったまま。器用に脱がされた格好で洋佑の背中は壁へと落ち着いた。
下半身に何もつけていないのに、上半身にTシャツを着たままの恰好は全裸よりも恥ずかしく思えて視線を逸らす。
「……は、……」
佑は笑みを浮かべたまま、触れるだけの口付けを落とす。
「……洋佑さん…無防備過ぎるよ?」
それは今身をもって体験している。
ただ、本気で嫌なわけではない。むしろ嬉しい──から、内心、疑っていても結局こう……
「……佑、だから……いい、だろ」
「うん。僕だけ、ね?」
他の誰にこんなこと──
言い返す前に、奥へと埋め込まれた指に掻き混ぜられて言葉が発せなくなる。壁に背中を預け、佑へとしがみつきながら、声を上げ、背中をのけぞらせた。
露になった喉や首筋に嚙みつくようなキスを繰り返した後、指が引き抜かれた。かちゃかちゃとベルトを外す間がもどかしく思える。
やがて壁に押し付けられたまま、足を抱え上げられた。不安定な姿勢に少しばかり体を震わせた。
「……っ…、…」
首筋へと絡めた腕に力を籠め直す。佑の指が尻を抱え上げると、足先が床から離れる。浮いた足を佑の腰へと絡みつかせ、落ちないようにとしがみついた。
「洋佑さん」
ぐ、と押し当てられた熱に体が震える。尻を支える指に肉を開かれ、ひくりと震える後孔へと熱が押し当てられる。
「……ちゃんと、ぎゅっとしててね」
言い終わると同時。押し当てられた熱の塊が中へと押し入ってくる。絡めた手足を震わせながら、落ちないようにと必死で力を込めてしがみつく。
「ぁ、あ…、っ……」
自重で深くなる結合。改めて背中が壁につくと同時、佑に強引に口づけられて眼を閉じる。
後で背中が痛くなったら、それを理由に自分の好きにさせてもらおう。
一瞬過った悪巧みが快感に流されてしまい、好きにするどころか、好きにあれこれされてしまったのだが。
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