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貰い物-3-C-
──次のお休みの時に首輪しよ?
そう言われた日から数日。今日は金曜日──明日は休み。
本気なのかそうでないのか──いや、佑はああいう時に冗談は言わない。くるくると回していたボールペンを止めると、はあ、と息を吐き出した。
嫌なのかどうか──は正直よく分からない。正直なところ、こういうものを使いたいとか、考えたことも言われたこともなかったから。
全く興味がないか、と言われると、そういう訳でもない。
一人で考えてもどうしようもない、とは言え、どうにもぐるぐる考えてしまう。
──お前のせいだぞ。
と、後輩を睨んでみるも、へらりと笑い返されて肩の力が抜けた。
──とりあえず。今日はきちんと仕事を片付けておくか。
そう思って目の前の作業に集中することにした。
◇◇◇◇◇◇◇
仕事が終わった後、佑の部屋に。出迎えてくれた佑はいつも通り。夕飯を食べて風呂に入って、ちょっとソファで雑談して。
首輪のことなんかすっかり忘れるくらいにいつも通り。
そして──
「んっ……、は……」
どちらからともなく、お互いに求め合うのもいつも通り。ソファの上、何度も口付けては離れ、を繰り返した後、そのまま行為に及ぶこともあるが、今日は佑が静かに身を引いた。
「……佑?」
半ば蕩けた眼で見上げる。愛おしそうに両手で頬を包んだ後、軽く触れるだけのキスを鼻先へと。
「……首輪。ベッドにあるから」
一気に現実に引き戻される。あ、と呟いて目を伏せると、佑の手を取って立ち上がる。
「……ぅ、……ん」
思わず視線を逸らしてしまう。でも、離れたくはなくて握った手に少し力を籠めると、佑が静かに笑う。
「嫌ならしないよ?」
ベッドルームへと入った。いつも通りの部屋──だが、ベッドの上には見慣れない首輪。
「……正直、分からない……から。試しでつけて、嫌だったら言うから」
ふふ、と佑が笑った。変な事を言ったかと首を傾げると、静かに手を引いてベッドに腰を下ろすよう促される。
腰を下ろすと同時に自然と離れる指先。
「僕が初めて洋佑さんとキスした時も同じ事言ってたな、って」
そういえばそうだった。
随分と前のことのようにも感じる。ふ、と洋佑も笑う。
「あれから、悪い事なんて起きてないだろ?だから今回も大丈夫だよ」
楽観的過ぎる、とまた呆れられるかと思ったが、佑は幸せそうに笑って頷いた。
洋佑も声は出さず、表情だけで笑みを返すと、着ていたTシャツを脱いで床に落とす。下着まで全部脱いだ方がいいのかもしれないのだが、何となく恥ずかしくていつも上だけ脱ぐにとどまっている。
「……えっと。座ったまま……がいいのかな」
寝転んだらつけづらいかも知れない。正直、つけたこともつけられたこともないから、どうするのが最適なのかが分からなくて、座ったままで問いかける。
「うん。そのままで」
佑の言葉に動きを止めた。佑が体を倒してベッドの上の首輪を手にするとかちゃかちゃと小さな音がする。
「……、っ」
首筋に当たる革の感触。人肌とは違うそれに少し肩を竦めるが、佑は動きを止めない。
洋佑の首に合わせて長さを調節した後、留め具へと。動く指が顎や首筋に触れて擽ったさに時折体を揺らしてしまう。
「……出来た」
そっと離れた指が洋佑の頬を包む。首に触れる革の感覚。緩めに締めたのか、動けば首輪も揺れて位置を変える。
「……こんなに緩くていいのか?」
指を伸ばして首輪に触れる。犬で言えばリードをつなぐような金具が三つほどついていて、洋佑が触れるとちゃらちゃらと小さな音を立てる。
「首を絞めたい訳じゃないんだよ?……痕が残るのも嫌だし」
頬を包んでいた手が首輪へと滑り落ちる。先に首輪を触っていた洋佑の指を両手で握ると、その指先へと口づける。
「……擽ったい」
慣れない感触。恥かしさもあるが、幸せそうな佑を見ることが出来るのは嬉しい──の方が強いかも知れない。
指から唇を離した後、佑に静かに押し倒される。背中がシーツにつくと同時に、ベッドが軋む。
「……、あ……」
小さな金属音と首に触れる革の感触。顔を覗き込まれると目を伏せてしまう。
「……」
無言で首輪を撫でる動き。留め具の一つを軽く引っ張られて眼を向けると、軽く口付けられた。
いつもなら首筋へと向かう動きだが、首輪をつけているためそのまま胸へと。露になった胸板へと唇が這わされると、びく、と洋佑の身体が震える。
「洋佑さん」
佑の指が下着の上から性器を探るように這わされる。
「……っ、何?」
手の中で熱を始める性器の感覚。一度強めに握った後で指を緩めると、腰骨まで指を滑らせ、上から下着の中へと指を滑り込ませてくる。
「……首輪…以外もつけていい?」
「へっ…ぁ、……!」
直接に性器を握り取られて動きが止まる。緩々とした動きで扱きながら、胸へと唇を伏せて吸い上げる。
「……調べてたら……洋佑さんに色々つけてもらいたくなって」
下着の中で指がもぞつく。手首で布を下ろすようにしながら、指先が嚢の下、その奥まで滑り、窄まったままのそこを指先が突いてくる。
「んぁ…、……」
思わず腰を浮かせてしまう。ずれた下着が半端に太腿の辺りでひっかかり、動きを阻害されるのが不快で眉を寄せると、佑が一度体を起こし、まとわりついた下着を静かに引き下げていく。
「…ぁ…ありが、と」
体につけているものは首輪一つ。脱がせた下着をベッド下に落とした後、佑は改めて洋佑の顔を覗き込む。
「ね、洋佑さん。首輪以外もつけていい?」
つ、と佑の指先が嚢から裏筋をなぞり上げる。ぷくりと滲んだものを掬い上げると、肉塊へと擦り付けるような動きで指先が絡みついてくる。
背筋を這い上るものに言葉が返せず、反射的に手の甲で口を押えた。
「……、……痛い、のは嫌だ……」
快感と混乱で声が小さくなる。情けないと眉を下げるが、佑は気にする様子もなく口を覆っている指先に口づける。
「うん。洋佑さんが嫌な事はしないよ」
掌越しに口づけるように顔を寄せた後、佑は体を起こした。
半端に刺激された性器が物欲しげに揺れ、佑の指と細い糸が繋がって切れるのが見えた。佑が一度ベッドから離れると、準備していたであろう物が入った袋を手に戻ってくると、恥かしくてじっと見ていられず、顔を逸らしてしまう。
「向き不向きもあるって書いてたから……嫌だったらちゃんと言ってね」
熱を帯びた視線と声。佑が手にしたものが何か──が分からないまま、洋佑はゆっくりと頷いた。
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