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貰い物-4-C-

 身動ぎをする度に首輪に繋がれた鎖が小さな音を立てる。  痛みや恐怖はなかったが、自分につけられた見慣れない代物に洋佑はゆっくりと眼を瞬かせる。 「……痛くない?」  痛みはない。からゆっくりと頷く。良かった、と表情を緩めた佑は、洋佑の首輪に繋がれた細い鎖を指で引っ張った。 「ぁ……、……」   びく、と洋佑の腰が跳ねる。くん、くん、と指先で軽く鎖を引っ張られる度に腰をくねらせ声を上げてしまう。 「た、すく、それ…だめ……」  震える声で懇願すると、佑の指が鎖から離れる。は、は、と短く荒い呼吸を繰り返す洋佑の頬を静かに撫でた。 「本当に?」  頬を撫でた指が滑り降りる。  首輪に繋がれた鎖の先──小さなクリップが乳首を摘まみ上げている。鎖を揺らされる度に何とも言えない感覚が背筋を這い上る。  体を揺らすたびに冷たいチェーンが肌を擽るのも慣れていないせいか、過敏に反応してしまう。 「……、…ぁ、や…はずかし、から」  鎖に触れる指から逃れようとするように体をくねらせる。ぎし、と大きくベッドが軋んだ。 「恥ずかしがる洋佑さんも可愛い…好き」  酔ったように目を細める佑。  つけていい、と言ったのは自分だが──想像以上に恥ずかしい。  両腕は頭上。首輪と同じような革の装身具で固定され、顔を隠すことも出来ない。胸には小さなクリップ。  首輪と細いチェーンで繋がれており、軽く揺らされるだけで両胸へと刺激が与えられ、声を上げてしまう。  何より── 「ひぁっ、あ…ァ、……」  つ、と佑の指が滑る。大きく開かれた足の間。ふわふわとした尻尾の根元へと。  広がった襞を撫でるだけで一際声が高くなる。尻尾の根元は洋佑の後孔へと続いており、その先にはシリコン製のアナルプラグが挿入されていた。  一番小さいものだと佑は言っていたが、今まで佑の指と性器しか受け入れたことがなかった洋佑には、未知の感覚。  気持ちいいとか悪いとかではなく。ふわふわとした尻尾の感覚と腹の中を圧迫するシリコンの感触と。普段とは違うそれらに意識が過剰に反応してしまうのに困惑を覚えるが、自分でもどうしようもない。 「痛くない?苦しくは……?」  自分の身体への負担を気にかけてくれていることは嬉しい。やわやわと触れる指の動きも、無理強いするものではなく、様子を探りながらの行為であることは十二分に理解できている。  が── 「へ、き……だけど…っ、ふ、……」  びく、と腰が大きく跳ねる。身体を動かせば、乳首へと繋がれた鎖が揺れて別の刺激が与えられる。快感なのか何なのか。  自分でも分からないまま声を上げて息を乱してしまう。  十分に熱を集めた性器の先からは、だらだらと白濁交じりの先走りが溢れ、身体を捩る度に揺れる性器の先から体液が散って肌やシーツを濡らしていく。 「……洋佑さん」  佑がそっと胸に唇を寄せた。クリップが外れないよう、周囲の肌へと口づけては軽く吸い上げ、を繰り返す。  その間も嚢の下、柔らかい部分を擽るように指先で触れ、洋佑の中から快感を引き出そうとしてくれている。 「く、あ、ァ…っ、…た、すく……」  切なげな声に佑の視線が向けられる。いつもよりも興奮しているのか、熱を帯びた眼の色に思わず息を飲む。 「……お、もちゃ…じゃなくて、佑……がほし、……」  大きく胸を仰け反らせると、ちゃり、と鎖が鳴った。 「胸、も…………」  足を開く。びくびくと震える身体に合わせて、尻尾が揺れ、シーツの上を足の指が泳ぐ。 「ここ、も……佑、のがほし──、」  不意に抱きしめられて息が詰まる。腕が緩められると、まずは胸のクリップが外された。じん、と熱を帯びたような赤い突起へと唇が被せられ、吸い上げられると、今までの比ではない快感に洋佑の声が甘く濁る。 「───~~~っ…あ!…」  堅いクリップとは違う柔らかい舌。熱を帯びたそれが色づいた箇所を這うだけで、大袈裟な程に声をあげてしまう。  拘束された手首のことを忘れて身体を揺らしてしまい、ベッドが大きく軋む。 「ん……だめだよ、洋佑さん」  静かに佑の指が伸びる。拘束を解くと、薄く痕が残ってしまった肌を切なげに撫でる。 「ごめんね……痕がついちゃった」  手首へと口づける。優しい動きに洋佑はぼんやりとそれを見つめる。 「痛くない?大丈夫?」  問いかけられて眼を瞬かせた。大丈夫、と頷いた後、痕を気にする佑の頬をそっと指先で撫でた。 「ん、大丈夫……痛くない」  そのまま両手で佑の頬を包むと、自分の方へと引き寄せた。軽く口づけてから、視線を合わせて緩く笑う。 「痛くないし……嫌、じゃなかったから」  大丈夫、ともう一度口づけると佑の方からも顔を寄せて来た。拘束を解かれた腕を佑の首へと回し、顔の角度を変えて深く重ね合わせる。  熱を帯びた佑の舌が口腔内を這い回るだけで、洋佑は達してしまったかのようにびくびくと体を震わせて悶える。 「ん──、ぁっ…は、ふ……ぅ──…」  くちくちと水音と喘ぎの混ざった吐息が零れる。互いの肌の熱を交換するように深く舌を絡め合わせては解き、を繰り返すうち腹の奥が疼くように感じて洋佑は足を捩る。  埋め込まれたままのプラグを締め付けると同時、物足りなさに腹の奥が疼いた。 「…──は、ふ……佑……」  蕩け切った表情の洋佑を見て佑が息を飲んだ。全身を薄く染め、吐き零す息すら熱を帯びて肌を震わせる。 「佑…が欲しい」  自分から足を開いた。そろそろと指を伸ばすと、自分が吐き零したものでぬるついた肌の奥、プラグの端を指で掴む。  引き抜こうとするが、上手く力が入らず、ただいたずらに揺らすだけの行為になってしまう。 「……洋佑さん、僕が、するから…」  掠れた声。自分の指の上から佑の指が重ねられる。ゆっくりと引き抜かれて行くそれ。挿入された時、入れられたままの時よりも排出する際の快感が大きく、声が大きく響く。 「ひぁ…、ァ、あっ…ん、……」  ずるりと引き抜かれたプラグはローションと腸液に塗れたまま。ベッドの端へと放り投げるよう置いた後、佑は洋佑の両足を抱え上げた。 「優しく…できなかったら…ごめん、ね」  押し当てられた熱。ずるりと容易く受け入れたそれは、一息に半分程突き入れられた。 「あぁっ…──、ァ、ふ、…は、ぁア……ふ──」  プラグとは違う熱。いつもの佑のものだと感じると同時、きゅう、と肉壁が強く絡みついた。痛みを感じたのか、佑の眉が僅かに寄るのを見て、洋佑は、ぁ、と小さく声を上げる。 「ご、め……うれし、くて……」  謝る声に佑は小さく笑った。足を抱え直すと、軽く腰を揺らす。 「洋佑さんが、僕を……欲しいって。全身で言ってくれてるみたいで……僕も嬉しい」  微笑む佑の肌を汗が伝う。ず、と、抽挿を始める動きは、どこか焦れたようでもあるが、ゆっくりと大きな動きで洋佑の中を貪った。 「んんっ……くぁ、…──ア、ぁ…ッ……」  ばつん、と肌が鳴る度に体をくねらせる。クリップは外されたとは言え、首輪に繋がれたままだから、揺らすたびに鎖がちゃらちゃらと音を立てて肌を滑る。  ぎし、ぎし、とベッドが大きな音を立てて軋む。引き抜く寸前まで引いた後、一息に奥へと突きこまれ、声にならない声を上げて全身を震わせた。  やがて抜き差しをする動きが小刻みになり、中へ埋め込んだまま腰を回したり、揺らしたり。  これは佑が達する直前の動き。ん、と顎を引き眉間に皺が寄る。 「洋佑さん……、僕、もぅ…………」  掠れた声で名を呼ばれたと同時。腹の中と外とで吐き出される熱を感じて、洋佑は一際大きく体を仰け反らせた後、シーツへと沈んだ。

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