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【出会いの春】第3話 episode.1

高校に着き、玄関に入ってすぐ目の前にある掲示板を見ると、教室の場所とクラス分けがかかれていた。 俺達は見慣れない名前が並ぶ中、自分の名前を探す。 俺の名前は4組あるうちに1組の欄にあって、教室は三階の301で階段から一番近い教室だった。 「宏斗、俺1組だったけどお前は?」 「……4組。最悪だー!雅と一番離れたよー」 嘘だろ?!と思いながら掲示板を見てみると本当で宏斗の教室は俺の教室と一番離れていた。 俺と宏斗の通っていた中学からこの高校にきたのは俺達以外、誰もいない。だから、宏斗と離れるのは知り合いが宏斗以外にこの学校に全くいない俺にとってとても不安なこと。 俺は宏斗の肩に手を置きながら階段を上っていく。 「じゃあ」と俺の教室の前で別れる。でもすぐ教室に入るわけではなくて宏斗の今は頼もしく見える背を見送ったあと教室の扉を開けた。 教室の中にはもちろん、見たこともない人ばかりで早くも女の子たちはグループを作って雑談をしている。しかも、俺のことを見て何かコソコソと喋っていて話の内容が気になり、耳を傾けると、「イケメン」、「かっこいい」と聞こえてきた。 今さっき宏斗から、俺は男なのに女子から可愛いと言われているというのを聞いて落ち込んでいたが、やっぱり俺はどこでも通ずるイケメンだなと思い直し、不安で丸まっていた背を伸ばす。 そして、教室の黒板で席を確認する。 俺はどうやら一番前の席で隣には眼鏡をかけた真面目そうな男子が座っていて本を読んでいる。座る前に「よろしく」と声をかけると彼はペコリと会釈をかえしてくれた。 可愛い女の子はいないかなと席につき、周りを見渡してみる。 すると、後ろからトントンと肩をたたかれた。振り向くと、髪はセンター分けで入学式当日なのに制服を軽く着崩した俺と同じくらいかっこいい男がいて耳元に顔を近づけてきた。 「……可愛い女の子探してたでしょ?」 「そう。あなたは?」 「俺はね……君が可愛いと思って見てた」 彼は耳元で囁いたあと、俺のことを指さして笑っている。 何を言っているんだこいつは。そして、俺は何を返すのが正解なのか……? 微動だにせず、見ていると、彼は「そんな顔しないでよ」と手を差し出した。 「俺の名前は久野 渚。君のことがこのクラスで一番可愛いと思って声かけた。よろしく」 渚がうっとりとしたような目で俺のことを見るから冗談かそうではないのか分からない。 俺は渚の手を握る。 「俺は花守 雅。よろしく」 「ふ〜ん、雅って言うんだ。可愛いね」 「……可愛くない。俺はかっこいい」 「うん。可愛くてかっこいい」 何回も何回も「可愛くない」とも言っているのに渚はぼーっと俺を見ながら「うん、うん」と頷いている。なんて頑固なやつなんだ。 「渚、聞いてる?」 俺が渚の顔を覗き込んだとき、隣の教室から「キャー」っと黄色い歓声が聞こえてきた。 何事かと思い、周りを見渡すと今さっきまで雑談していた女の子達が教室から居なくなっている。 「気になるなら行ってみる?」 「うん」 渚と一緒に席を立ち、隣の教室に向かう。

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