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【出会いの春】 第3話 episode.2
教室から出て、廊下に出てみるとそれはもう沢山の女の子たちが集まり、ごったがえしている。この多さはきっと上級生たちも集まっているだろう。
「すごい騒ぎだな」
足を一歩進めるにつれて、好奇心が胸の底から湧き上がり、どんどん一歩が速くなっていく。
この先に何が待っているのだろう、と女の子たちの間を通り抜け、夢中で教室の中に入る。
すると、教室の中のちょうど一番後ろの窓側の席。
その席を沢山の女の子が囲み、可愛らしい笑みで何やら話しかけている。
教室を見渡しても特に珍しいものは何もなく、この騒ぎはあの席に座っている誰かが発端らしかった。
「雅〜〜。俺たちの教室に帰らない?ここには雅以上の可愛い子はいないよ」
隣に立っている渚が俺だけに聞こえる小さな声でささやいてくる。
「ここまで来たんだ。気になるだろ?あと、そんなことは本命の女の子を口説くときに使うんだな」
俺がささやき返すと、渚はプイッと俺と反対の方向に顔を向ける。
行くぞっと渚のブレザーの裾を引っ張るが微動だにしない。
だから、俺は一人で女の子たちの間から何があるのかを覗いた。
覗いた先にあったのはとてつもなく美形な男で、その男は朝見た男と全く同じ顔をしている。
あんな綺麗な男見間違えるわけがない。
朝見て気になり続けた男が、目の前にいて同じ学年なんてこんな嬉しいことあるのか。
あまりの嬉しさに口角が上がる。
我慢しろ、我慢しろとほっぺたをつまんだり、引っ張ったりしているうち、彼と目が合った。
絶対変な顔、見られた。
バッと顔を背けると、男は席から立ち俺の手を掴む。
周りに居た女の子たちは怖い顔をして俺を凝視して不機嫌そうな顔をしている。
今さっきまで笑顔だったじゃないかと、女の子たちに言いたくなるほど顔には何こいつとかいてあるようだ。
「あなたに話したいことがあります」
やけに熱っぽい目で俺を見てくる彼。
心臓がやけにドキドキしてきて、自分がわからなくなる。俺は男が好きだったのかと思いそうなほどに。
ぼーっと見つめ、黙っているとそれを了解ととらえたのか俺の手を引っ張り、彼と教室から出る。
そして、階段をくだり、2階の誰もいない教室に入った。
「いきなりどうしたんだ?」
「今日の朝、冷たい態度取ってごめんなさい。あなたと会えて、名前を呼ばれて驚いて、どんな反応取ったらいいのか分からなくなって、それで……」
そこまで言ったあと、彼は喋るのを一旦やめた。
なぜなら、俺が大声で笑ったから。
「何で笑う?」
「だって、お前からそんな可愛い謝罪が出てくると
は思えなくて……!」
笑いながら、彼に近づき、頭を撫で回す。
撫で回すと初めは驚いていたが、しばらく経つと満更でもない表情で微笑んでいる。
その顔の綺麗なことといったら、こんな顔を見たら教室に居た女子たち全員倒れるだろう。
俺は頭から手を離したあと、今は確信している名前を彼に聞き、自分も名乗ろうとする。
「なぁ、朝陽。お前、朝陽って言うんだろ?俺は……
「雅。暁 雅(あかつき みやび)」
顔を少し赤らめながら、名前を言う朝陽。
でも、俺とは下の名前は同じだけど、名字が違う。
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