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第2話

「やっぱ、告白されたの?」  大学の講義を終えて自宅に帰った俺は、簡単に部屋を掃除していると食材を買い込んだ冬悟が到着し、キッチンに並んで一緒に夕飯を作っている。まぁ、俺は相変わらず野菜をむしっているだけだけど……。  俺は昼に学食で女子に囲まれた後の事を知らない為、何気なく話題を振ってみるとジトッと嫌そうな視線を俺に向けながら冬悟が 「まぁ……断ったし」  と、簡潔に答えてその話を終わらせる。  だが俺はニヘラと笑いながら 「えぇ~、また断ったのかよ。可愛い子だったじゃん?」  冬悟が誰かとくっついてくれれば俺もスッパリと諦められるのに……。と思っている感情は本心の為、そのまま言ってしまう。 「俺にはお前がいるのにか?」 「ッ……」  最近の冬悟は、こうやって自分の気持ちを隠す事をしなくなった。それは洋介が昴君と正式に付き合った位から顕著に変わり始め、隙あらば俺に対してストレートに気持ちを言ってくる時もある。 「イヤ……何回も言ってるけど、冬悟はさ選り取り見取りなんだから別に俺じゃ無くて……」 「オイ、それ以上は聞かないって解ってるだろ?」 「……」  不機嫌そうに答えながら冬悟は出来上がったおかずを皿へと移して、黙った俺に 「出来たから、テーブル拭いて箸持って行って」  自分の側にある布巾をズイと俺に差し出す。俺は無言で布巾を取り、リビングのテーブルを拭くためキッチンから移動した。  冬悟がなぜこんなにも俺に執着するのか解らない。今日みたいにアイツと付き合いたい、番たいっていう相手は引く手数多いるのに……。  そりゃぁ、なまじ昔から一緒にいたから冬悟の性格だったり、癖は良く理解しているつもりだ。だから誰よりも楽でいられる相手だと自負もしている。  冬悟の家には腹違いの兄が二人いる事で、表面上は穏やかで問題無いように見えるが、一歩懐に入ってしまえば考えられないようなギスギスした暗い部分がある事も知っている。  すぐ上の美容師の兄とは、その兄が美容師になり家の後継者問題から離脱し独立したことで前よりも良い関係が築けていると思うが、既に父親の会社を手伝っている長男とは、当人同士云々よりもその母親同士が自分の子供を競わせるようにしている為に問題も多い。  冬悟の父親も母親同士が歪み合っている事は知っている筈なのに、そこには興味が無いのか……それとも競わせる事でより優秀な息子のどちらかと……と思っているのか、見て見ぬ振りを決め込み傍観している節がある。  折角裕福な環境で育ち、周りの誰よりも自由に出来る事が多い筈なのに、一番信頼出来る家族が信頼出来無いなんて環境…… 「オイ、何ボ~っとしてる? 早く持って行ってくれよ」  上の空でテーブルを拭く俺に、後ろから声がかかり俺はビクリと肩を震わせて後ろへと顔を向けると、冬悟が少し呆れながら対面のカウンターへ料理を置いているところだった。 「悪い」  ボソリと呟きながら近付いて、俺はテーブルに二人分の料理を並べる。  飯を食い終わって、お互いにある課題をあらかた済ませると交代で風呂に入り映画を見ている。 「冬悟お前、今日どうするつもりだ?」 「泊まる」  映画も終盤に差し掛かった頃、チラリと時計を見れば結構ないい時間になっていて、そうだろうな。と思いながらも冬悟に尋ねれば、予想通りの返答が返ってきて俺は 「布団は自分で敷けよ」  と、呟く。  俺の返しに冬悟は一度俺の顔を見たが、俺はずっと画面から視線を外さない。  きっとこうやって釘を刺しても冬悟は俺のベッドで俺と一緒に寝ると解っているからだ。  昔からの名残で、大きくなった今でも冬悟は俺と一緒に寝たがる。それに良いのか悪いのかベッドはダブルサイズで俺達が寝たところで窮屈に感じた事はあまり無い。冬悟もそれが解っているからか、いつも俺が布団敷けよと言っても敷いた試しが無い。  映画が終わりエンドロールを見ない冬悟は、先に歯を磨く為洗面所へと姿を消す。  俺はちゃんと最後まで見終わってから洗面所ヘ行くと、冬悟はもう歯を磨き終わっていて 「先に行っとくから」  と、手の平をヒラヒラと振りながら出て行く。その後ろ姿を目で追いながら、ぜってぇ今日も布団敷かないなコイツ。と心の中で思いながら、俺は歯ブラシに歯磨き粉を押し出した。  寝室へ入ると、案の定俺のスペースを空けて冬悟がベッドで寝ている。  俺は小さく溜め息を吐き出すと、掛け布団を剥いで空いてるスペースへと体を滑り込ませ鼻から息を吐き出す。  隣で起きているのか既に寝ているのか解らない背中に 「お休み」  と、小さく呟いて俺は瞼を閉じた。

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