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第6話

 冬悟がいつ帰ったのか解らない。  ただ、キッチンの鍋にはスープが作ってあって、リビングのテーブルに 『食べれるようなら食べて、ゆっくり休め』と癖の強い字で置き手紙があった。  昨日買った惣菜を食べれるほど食欲は無いな……。と感じ、俺は鍋を温める。  カーテンを開けるのも億劫でそのままにし、温まったスープを皿へと入れてリビングのソファーに座ってテレビを点ける。朝のニュースがかかり、アナウンサーが色々と喋っているが俺の頭の中には入ってこない。昨日からずっと俺の中にあるのは、冬悟と彼女の事だけだ。  ダラダラと食事をしながら、持ってきていたスマホで同じ学科の奴に今日は休むとラインして、代返を頼む。  食べ終わり、食器を洗って再び寝室に戻って寝ようとベッドに横になるが寝れず、考え事をしたくなくてスマホでユーチューブを眺めていると、いつの間にか気を失うように眠っていた。  今、何時だ?  寝ている筈なのに気持ち良く起きる事が出来無い。むしろ体は前よりも怠く、熱も上がっていると感じる。  本格的に風邪ひいたかな……?  カーテンを閉めている為、時間の感覚が無い。怠い体をベッドから起こしてスマホに視線を落とすと、冬悟からラインが何件も入っている。 『今日大学来てないって聞いた』 『大丈夫なのか?』 『寝てんのか』 『今日も飯、作りに行こうか?』  心配している文面に、フハッと笑みが零れてしまうが次いでは眉間に皺が寄り、俺は 『大丈夫。今日も昨日作ってもらったスープ飲むから来なくて平気』  とだけ返して、スマホの電源を切る。そうして昨日冬悟が知らぬうちに帰ったという事は玄関が開いているのか……と気付いて、俺は鍵を閉めにベッドから出る。  ガチャリ。  鍵を閉めて水でも飲むかと一歩踏み出したところでフワリと良い匂いを感じ、俺はその匂いに誘われるように洗面所へと向きを変えた。  洗面所に入って視線を彷徨わせれば、洗濯籠の中に冬悟が脱ぎ捨てたスウェットが目に入り近付いて手に取る。そうして無意識のままスウェットを鼻へあてがいスゥ~と息を吸い込めば、ビリビリと鼻孔から脳へと電流が走る感覚にペタリとその場に座り込んでしまった。 「……………え?」

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