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「姫宮様、散歩の時間になりました」 ソファに座り、テレビを流し観しているうちにうたた寝していたようだ。お世話する人の声でふと目を開けた。 「あれ、姫宮様。今、うたた寝でもしていたのですか?」 「⋯⋯袋田さん」 頭上から声が聞こえ、上を向くと、若い男性がにこやかに笑った。 お世話する人と同じく、依頼人から「外で何があるか分からないから」と付けられた警護の人だ。 お世話する人とは違い、気さくな性分もあるからなのか、初対面から嫌な雰囲気を感じさせない人であり、親しい人がいない姫宮にとっては、名前を覚えていられるほどの少々気を許せる人だった。 「ご飯食べた後って、眠くなりますよね。僕もたらふく食べてしまった後はついつい眠くなって──」 「袋田さん」 離れて家事をしていたお世話する人が、いつの間にかこちらにやって来ていた。 袋田は「やべっ」と小さく呟いた。 「お喋りするのはいいですが、お仕事も忘れずにやってください」 「はあーい。⋯⋯ったく、うっせー」 「何か言いましたか?」 「あ、いえっ! なんでもないっス! さ、ささ! 姫宮様! 今日も元気に楽しいお散歩に行きましょうか!」 慌てて、しかし、取る手はお腹の子のことを思ってか、労るように優しく、引いてくれた。 こういう小さな優しさは彼の性分なのだろう。 前に、「どんな相手でもいいから欲しい!」と嘆いていたが、これならばすぐにでも出来そうな気がするのだが。 手を引いてくれ、靴を履かせてくれた袋田と共に、外に赴いた。 「今日も晴れて良かったですねー! 散歩日和です!」 いつものようなテンションで言う袋田に、「ええ、そうですね」と小さな声で返した。 先週は雨ばかりで、唯一ともいえよう気晴らしに行けなかったため、鬱々としていた。 本当に晴れて良かったと、一人で喋り始める袋田の話をどことなく聞きながらそう思っていた。

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