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それから、発情期(ヒート)が来る頃合いに、改めて御月堂の依頼を受けた。 依頼夫妻の受精卵を姫宮の子宮に入れる手術が無事に終わり、病室のベッドでまだ膨らんでいないお腹をさすっていると、声が降りかかった。 見上げると、御月堂がいた。 「ご苦労だった。明日以降は私が用意したマンションの一室に滞在してもらう。何かあれば、身の回りを世話をする者達に頼るといい」 「はい。ありがとうございます」 「では、明日からよろしく頼む」 「私は仕事に戻らないといけない」と言い残し、去るのを、姫宮はゆっくりと頭を下げて見送った。 御月堂の姿が見えなくなると、再び自身の腹部を見つめた。 『体調は大丈夫か。子どもは順調か』 腹の上に置こうとした手が止まった。 初めて妊娠した時、食べたくても戻してしまう、つわりの症状に悩まされていた。 そのことを伝えると、心配する声が返ってきた。 その声に当時の自分はその言葉に酷く安心して、涙が溢れた。 そんな姫宮に対して、一瞬戸惑いを見せたものの、お腹の子と共に優しく抱きしめてくれた。 そんなささいなことさえ、幸せに感じられた。 「······」 夢物語を終わらせるように、瞼を閉じた。 今は御月堂様(この子)のために、仕事を遂行せねば。

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