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御月堂の代わりにやってきた松下と共に訪れたマンションの一室のドアを開ける。 大理石の玄関に清潔感を覚える広々とした廊下に、両側に何部屋かあるのだろうと思われる扉が等間隔にあり、その前に5名ほどの世話係らしい控えていた。 その中の先頭にいた一人が姫宮達の前に歩み寄り、頭を下げる。 「姫宮様、お待ちしておりました。これからお世話をさせていただきます、安野(あんの)と申します。よろしくお願いします」 「よろしく、お願いします」 はきはきと、しかし、物腰柔らかそうな口調で、第一印象は悪くなさそうに思えた。 「お荷物はそちらだけでしょうか」 「はい」 「後で案内しますが、姫宮様のお部屋に置いておきますね」 「あ······お願いします」 そこまでなさならなくても、という言葉をぐっと堪え、安野の隣にいた者が来て、「お預かりします」と小さめのスーツケースを両手で受け取った。 「お部屋を案内致します。──松下さん、ここまでありがとうございました」 「いえ 。──姫宮様、これからは安野さん達にお世話になることが主ですが、私もたまに様子を見に来ますので、何かありましたら、私か安野さん達に仰ってくださいね」 「はい。何から何までありがとうございました」 「御月堂様の大事なお客様ですから、そこまでされることではありませんよ」 頭を下げる姫宮に、苦笑気味に返した。 「では、私はこれで」と深々と礼を取った後マンションに出ていくのを、姫宮は見つめていると、「姫宮様?」と声を掛けられた。 はっとして安野らの方を振り返ると、不思議そうな顔がずらりと並んだ。 「どうされました?」 「あ、いえ。何でもありません」 上がり(かまち)のない、マットの前で靴を脱ぎ、並んでいたスリッパの一組を履くと、安野の前に行った。 「お待たせしてしまい、申し訳ありません」 「謝ることではないのですよ。今日初めて会ったのですから、不安がありましょう。出来る限りのことを尽くしますから、至らないことがありましたら、遠慮なく仰ってください」 「······ありがとうございます」

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