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自身のお腹の中にいるから、姫宮は直に感じるが、やや膨らんでいても、そうとは思わない。 それが、"普通"なのか。 「でしたら、このお腹に触れながら、おはようと挨拶してみたり、最近あった出来事でも話しかけてみたりはどうでしょう。初めて聞く声にびっくりするかもしれませんが、何かしらの反応をしてくるかと思います」 「そうなのか」 「はい」 考えている様子の御月堂であったが、やがてしゃがみ、膨らんだ腹部をじっと見つめていた。 しかし、すぐには触れてこない。 そんな彼の様子に不思議に思っていたのも束の間、ゆっくりとした動作で手を乗せた。 思っていたよりも慎重に撫でるその手は、姫宮より一回り大きく、前よりも大きくなったとはいえ、ひとなででほぼ全体を撫で回せるほどだ。 『本当にこの腹の中に、俺達の子どもがいるのか。実感が湧かないな』 「おはよう⋯⋯。⋯⋯最近あった出来事は、そうだな⋯⋯。いつもと変わらず、休みもなく仕事をしている。それから──っ」 ぴくり、と動いた。 一瞬、お腹の子が反応をしたかと思ったが、御月堂の手であったようだ。 では何故、そのような反応を。 「泣いているのか」 「⋯⋯え?」 御月堂のことを見た時、ぽた、と雫が一粒落ちる。 それがきっかけで、自分が泣いていることを自覚させられ、一粒、また一粒と流れていく。 どうして泣いているのか。 「何か、私が何かしたか」 「いえ、御月堂様がしたわけでは、ありません⋯⋯。私も分からなくて⋯⋯っ」 姫宮自身がしたことであるのに、急に泣いた上にそんな本人が分からないと言ってしまうものだから、余計に困惑するだろう。 はっきりとした表情は見せなかったものの、僅かに眉を潜めたことで物語っていた。 どうして、泣いているのか。──いや、自分の中で答えはとっくに分かっていたじゃないか。

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