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42.
途端の沈黙。
暇潰しに、窓の外側にある人工池でも眺めていようかとも思ったが、その前には御月堂がおり、場合によっては、彼のことをじっと見つめる形となるため、不快に思われてしまうと思い、俯いていた。
優雅な音楽に、宿泊客と従業員の会話しているらしい声が、遠くに聞こえる。
喫茶室には、自分と御月堂の他にいないため、より浮いているように思える。
早く頼んだ物を飲んで、さっさと帰ってしまいたい。
前よりも活発に動く時間が増えた御月堂の子どもも、姫宮が緊張しているせいもあってか、じっとしている。
「お待たせしました。珈琲とレモン水になります」
じっとりとかいていた汗が冷たく感じてきた頃、頼んでいた物が運ばれてきた。
水にレモンを浮かべたグラスが目の前に置かれたのを見つめ、視界の端に御月堂が頼んだ珈琲が置かれたのを見た後、「ごゆっくり」と告げたウェイトレスに軽く会釈した。
御月堂がカップを持った少し後、姫宮もレモン水を手に取り、ストローに口つけた。
来た直後よりも体が冷えてきたとはいえ、完全には冷え切ってないため、キンキンに冷えたレモン水が入り込んだ瞬間、思っていたよりも冷たく、身を震わす。
いつもの散歩よりも長く歩いたのもあって、体が欲していたようだ。続けざまに飲み、気づけば飲み終わっていた。
「そんなにも暑かったのか。もう一回頼むか」
「あ、いえ」
遠くにいたウェイトレスを呼ぼうとする御月堂を止めた。
「あとはこの水で大丈夫ですので」
「遠慮するな。それとも、あまり飲んではならないのか」
その質問は、妊婦だから飲む量を制限せねばならないという意味なのだろう。
御月堂に遠慮をしているのが主だが、ここはそれに則り、「そうです」と言った。
「そうなのか。ならば仕方ない」
そう言ったきり、他に言うことはないと飲むことに専念した御月堂に、姫宮も席に着いた時に置かれた水を飲み始めた。
そして、二人がほぼ同時に飲み終わった後、御月堂はこう告げた。
「私はこれから仕事だ。ついでに車で送っていく」
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