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それからしばらくの間は、前のように安野と散歩しに行くことが増えた。 安野だと、御月堂よりかは慣れているのと、彼女が何かと話題を作ってくれるため、短いながらもそれに言葉を返すことができる。 「御月堂様、お忙しいというのに、あれから一緒に散歩をすることが増えましたね」 「ええ」 公園のベンチに腰をかけてすぐ、安野がそう話を切り出す。 「相変わらず、あの喫茶店でお茶をしているのですか?」 「そうですね」 「私とお散歩しているコースより少々遠いようですが、姫宮様の今の状態ですと大変でしょう。御月堂様は意味があって、そこに連れて行っているのですか?」 「それがよく分からないのです」 そこで、こないだのどうして一緒に散歩するのかと訊ねた時、質問を質問で返され、他に飲まないのかと訊かれたことを話す。 「そのようなことが」と安野が考えていたのも束の間、「恐らくですが」と前置きをした。 「マンションに訪れた時、お腹の子と話す機会があったでしょう。その際にも思ったのですが、緊張をされているのでしょう」 「緊張を⋯⋯?」 「はい。いくら自分の子であれども、常に身近に感じている母親とは違い、実感がないのでしょう。一緒に暮らしているわけでもありませんから、特に」 今までの依頼人らを思い出す。 今回のように部屋と世話係を与え、一緒に暮らす形ではないものの、定期的にお腹の子に会いに来るため、依頼人が訪れることがあった。 それは良くも悪くも含めて。 その中には、御月堂と同じような立場の者もいたが、それでも今か今かと楽しみにしているのが滲み出るほど感じたりする時もあった。 だから、今までとは違う対応に困惑していたが、腑に落ちた。

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