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柔和だが、一瞬の隙を見せないウェイトレスとは打って変わっての、緊張せず気軽に入らせてくれる穏やかそうな雰囲気の従業員に面食らっていると、御月堂に声を掛けられ、ハッとし、「そこで大丈夫ですよ」と窓際の席に対面する形で座った。 大きな窓に、外にはちょっとしたテラス席に先ほどの植物が広がり、都会にいるとは思えない自然を感じていると、従業員の女性がお冷とメニュー表を持ってきた。 御月堂が、「どうも」と短く言うと、メニュー表を手に取って、こちらに渡してきた。 「先に見ろ」 「え、よろしいのでしょうか。御月堂様は、こちらの喫茶店に来られたことがあるのですか」 「今日が初めてだ」 「では、何故こちらに⋯⋯」 「ただの気分転換だ」 大企業の社長が、一流ホテルの一角にある喫茶店から、一般人が気軽に行けるようなアットホーム的喫茶店に行くものなのか。 上流階級の者が必ずしも、豪勢な場所に赴くとは限らないということか。 こちらの勝手に壮大なイメージを押しつけているだけかもしれない。 "あの人"とは、人目を気にしていたものだから、こうしてこのような場所にも行くこともなかったものだから、余計に。 「ごめんなさい」 「何故、謝る」 「あ、いえ、その⋯⋯」 つい出てしまった言葉に、どう言い訳をしようかとしどろもどろになっていたが、やがて、ぽつぽつと言った。 「大企業の社長であり、しかもアルファというお方が、このような私のような人間が行く所を存じているとは思わなく⋯⋯。こないだのホテル内の喫茶店に行かれるのが常かと、勝手なる想像をしてしまい、その言葉がつい出てしまった次第です」 視線をさ迷わせ、心を落ち着かせようとしていたらしく、気づけば腹部を撫でていた。 「⋯⋯」 反対側では、見ずとも御月堂がこちらを見ている気配が感じ取り、すぐに口を開かないことで、体が緊張し出した。 自身の言ったことが怒りに触れてしまったのだろうか。けれども、見られているというだけで、頭の中が真っ白になってしまい、何を言ったかほぼ忘れてしまった。

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