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「⋯⋯どうした。気分が優れないのか」 前に安野と公園に行っているという話をしてから行くようになった矢先、御月堂にそのような言葉を投げかけられた。 御月堂の妻・雅の心のない言葉をこれでもかと浴びせられ、それからというもの、何もする気が起きなく、呆然としてしまった。 「大丈夫なのか」 「⋯⋯あ」 顔を覗き込まれ、そこでようやく御月堂の存在を認める。 「今日会ってから、どこか上の空だな。何かあったのか」 何か⋯⋯言うのも嫌になる言葉を思い出しそうになり、その前に違うことを言葉にした。 「いえ、大丈夫です。最近、御月堂様のお子さんがますます活発になりまして、寝不足なのかもしれませんね」 「そんな時に付き合わせて悪いな」 「とんでもございません。仕事ですから」 「仕事であろうが、万全な状態で望まないといけない。頭の働かない時に小さなミスをしてみろ。それが大きなミスに繋がり、信用を失う可能性がある」 いつになく真剣に言う彼の言葉に、「気をつけます」と返した。 「それにしても、早めに帰った方がいいか。寒くなってきたしな、体を冷やしかねない」 「もう少しだけ、せめて、この公園を1周するぐらいお散歩してもよろしいでしょうか。久しぶりの外ですので、気分転換をしたいのです」 本当は今日、御月堂と散歩をすることすら、安野達に強く止められていた。 マンションの部屋であれば、自分達がいて、どうにか対処が出来るかもしれないが、外ではどこから襲われるか分からないという。 いつにも増して心配性が加速する安野に、「少しでも外に行かないと、それこそ気が滅入るから」と言って、行かせてもらった。 「⋯⋯無理するなよ」 「はい」 どこか言いたげな顔をする御月堂に、前よりも表情が見えてきたことに 密かに嬉しく思いつつ、返事をし、再び歩き始めた。

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