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「私も最初、御月堂様はそのような方だと思ってました。しかし、ご自身のお子さんに話しかけている時、向けている目が慈しみのあるように感じられて、お子さんが蹴った時も驚いた表情をなされていて。微量ながらも初めて見たものですから、驚きはしましたが、ちゃんと自分の子だと思っていることが嬉しくて⋯⋯」
今までの数少ない依頼人夫婦と比べれば、はっきりと嬉しそうな表情をしていなく、ただ跡継ぎのためとしか思ってないと思っていた矢先、そのような表情を見せたのだから、自分が気づかないだけで、今までも表していたのではないかと思われる。
「⋯⋯あの時、笑っていたのはそういうことなのか」
「あ⋯⋯え、まぁ⋯⋯」
そういえばあの後、何故笑っていたのか言わずに終わっていたことを、今さらながら思い出す。
「あの時は、不躾なことをしてしまい、申し訳ございませんでした」
「いや、別に怒っていたわけではない。そんな風に言われたことがなかったものでな、驚いていた。⋯⋯雅にも言われたことがない」
独り言のように言った中の名前に、心臓が跳ね返った。
──人の旦那をそそのかして、身ごもったのでしょ。オメガであれば、男であろうが女であろうが簡単に出来てしまうのだから。
吐き捨てるように言われた言葉が頭の中で反響する。
「⋯⋯前に、いつも行っていた落ち着く喫茶店で、御月堂様のような方が行かれるとは思わなかったと私が言った時、御月堂様が偏見だと仰ってましたよね。それは世間一般的な考えでそう仰いましたか」
「なんだ藪から棒に」
「急に思い出しまして」
顎に手を当て、思案している御月堂に、「やっぱりいいです」と言いかけた時、「そうだな」と考えながらというような切り出しをして、
「私は当たり前に、将来自身の会社を継ぐことしか頭になく、いや、そう言われ続けたから、そもそもアルファだの、オメガだの、そういう性で優劣をつけたことがなかった。だから、どのような人間だろうか、好きなようにすればいい程度で思っていた」
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