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67.※過去

中学生の頃、両親のいさかいが日を増すごとに増えていった。 小学校高学年の頃、第二の性の検査結果を見せたくなくて、口で嘘を吐いて、ごまかせたかと思っていたが、発情期の匂いで気づかれてしまい、酷く泣かれた。 その時はまだ同情してくれて、親身になってくれると思っていたのも束の間、腫れ物扱いをされた。 食事は、通常時は食事を囲むが、その間の会話は一切なくなり、こちらが話しかけようとも、まるで存在してないかのように無視をされ、発情期の時は部屋の前に置かれる。 さらに言うと、必要最低限は部屋から出ないようにと強く言われる始末。 気分は囚人のようだった。 いさかいが増えた理由も、周りの目を気にしていたからであって、これ以上面倒は見切れない。どっちが面倒を見るのかという、いわば押し付け合いで喧嘩が始まってしまうものだから、ますます家にいたくなかった。 だが、発情期が不安定だったようで、そのいつ訪れるのか、周りに、一番は両親に迷惑を掛けてしまうのが怖くて、少しの拠り所になれそうだった学校を休みがちになっていた。 誰にも相談出来ない辛さと、両親の怒鳴り声と発情期に怯え、精神が限界にまで達しそうな時、ほとんど行かなかった中学を卒業したのと同時に、家を出て行った。 無断で出て行っても誰も追いかけて来る者がいないと充分に分かっていても、実際そうだと直面すると、虚しさが襲いかかり、気づけば泣き叫んでいた。 涙が涸れて、一銭もなく、行く宛てもなくフラフラしていると、中学生の子どもが知らない世界へと入ってしまっていた。 今思えば、キャッチセールスだろう。その人当たりの良さそうな顔をした人が、優しい声音でこう言うのだ。 「キミのような可愛い顔の子にぴったりの仕事があるよ」

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