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自分の耳を疑った。 彼は今、何と言ったのか。 『え? 俊我さん、何を言っているの?』 『お前はここまでだ。子どもももらっていく』 表情を一つも変えず、そう告げられた。 その際、外してとねだったのに外してくれなかった首輪をいとも簡単に外された。 血の気が引いていく。 『へ? なんで? 僕が必要がないってどういう⋯⋯──』 その時、俊我の手が眠る子どもに伸びたことで咄嗟に庇った。 が、それでも俊我は無理やりにでも引き離そうとする。 『やめてっ! 今ようやく寝たところなのに! どうしてそんなことをするの!』 俊我はそれでもやめず、さらには悲鳴に似た叫びを上げてしまったせいで、子どもが泣きながら起きてしまった。 『どうしてこんな酷いことを⋯⋯っ』 取られそうと思った瞬間、姫宮の手から離れてしまった。 小さく声を上げ、すぐさま手を伸ばしたものの、俊我の腕の中に入った。 『返して⋯⋯』 俊我は一瞥してくるが、それまでで彼らは姫宮の前から去って行った。 どうしていきなり態度を変えてしまったのか。どうして、姫宮から子どもを奪っていったのか。 やっぱり、自分がオメガだから? 『⋯⋯どうして⋯⋯』

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