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81.

次に目を覚ました時、病院のベッドであった。 そばで座っていた御月堂と目が合うと、彼は分かりやすく目を開いて驚いていた。 「⋯⋯目が覚めたのか」 それから、安心したと言うように深く息を吐いた。 御月堂が言うには、あれから丸二日は眠っていたようだ。 「⋯⋯また、ご迷惑をおかけしましたね」 「そんなことはどうでもいい。⋯⋯精神的なものだけかと思っていたが、外傷を負っていたと担当医から聞いた。ここまであいつは⋯⋯」 「⋯⋯それは、恐らく違うかと」 雅を庇うというわけではないが、しかし、穢らわしい仕事で客に手を上げられたと言うわけにもいかず、噤んでいると、「言いたくないのならいい」と返された。 「顔にまで傷つけられていたとは。久しぶりに見た時、お前じゃないと思ったぐらいだ」 「⋯⋯すみ、ません⋯⋯」 「違う。⋯⋯見たくなるような顔がこんなことにされて、やった相手も、そして、自分にも煮えくり返るほど憤りを感じたほどだ」 頬をガーゼで覆った箇所に、触れるか触れないかの距離で触る。 はっきりとした言い方ではないが、触れられているわけではないが、その箇所がじんわりと熱くなるのを感じて、いたたまれなくなった。 こんなの、勘違い。 「⋯⋯仕事の方は⋯⋯」 「お前が仕事のことを気にするな。体のことを心配しろ」 「はい⋯⋯」 手が離れていく御月堂のことを見つめていた時、急に御月堂が横抱きしたことを思い出す。 「あの⋯⋯あの時、お手を煩わせて、申し訳ございません⋯⋯」 「あの時⋯⋯? ああ、自分の体を顧みなかったお前を抱き上げた時か。あんなこと大したことではない。⋯⋯それよりも」 不自然に言葉を切った御月堂に不思議そうに見つめていたのも束の間、「⋯⋯いいや、なんでもない」と立ち上がった。 「私がいつまでもいても、気を遣って、話してしまうのだろう。今日は帰るから、安静にしてろ」 小さく返事をすると、後ろを振り返った御月堂がこう付け加えた。 「また明日来る」と。

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