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ついでてしまった言葉にハッとしていたが、御月堂は気に止めている様子はなかった。 「時に、小野河俊我と雅が置き去りにした子ども、お前と関係のある子どものようだな」 何の脈絡もなくその話題を振られ、しかもその話をされるとは思わなく、体が強ばった。 「⋯⋯えぇ、はい。俊我さん──あの人の間にできた実の子です。あの子はあの後どうしたのですか」 「私が保護し、今は安野達に世話を任せている」 「安野さん達に⋯⋯。重ね重ねご迷惑をおかけしております」 「お前に言わせたいのはそれではないし、それに安野達はずっとお前の帰りを待っている」 自身の耳を疑った。「安野さん達が?」 「ああ、お前がいなくなった後、契約を解消しようとしたのだが、どうしてもきちんと挨拶をしてからにしたいと強く言われてな。そのまま続けてもらっている」 そんな勝手に姿をくらました相手に、挨拶するまで帰りを待たなくていいのに。 本当、律儀な人だ。 「⋯⋯だが、私が言いたいのはそれではなく⋯⋯それを口実に、ではないが⋯⋯くっ、なんて言えばいいんだ⋯⋯!」 苛立ちげに整っていた髪を乱す。 こんなにも感情的になる御月堂は初めてだ。何に怒りを覚えているのだろうと、凝視する。 すると彼は眉を潜め、かき上げた後、改めて姫宮を見た。 その瞳は真剣そのもので、姫宮は喉を鳴らす。 「⋯⋯前に公園に行った時、自分の感情を伝えることも、相手の感情を汲み取ることが出来ないという話をしたことを覚えているか」 御月堂が公園に行ったことがないという話がきっかけで、彼の生い立ちからそのような話をしていた。 「ええ、覚えております」と頷くと、彼はどこか慎重に言葉を選ぶような素振りを見せた。 「その時、私が子どもに話しかけいる時に表情が出ていたと言っていたが、それはお前がきっかけかもしれないな」 「私が⋯⋯?」 目が瞬く。 「初めて会った時、私と同じように感情を表すのが難しいのかと思っていた。だが、子どもに触れた時、表情が崩れて、その時私とは違うと思い、どうしたら悲しい表情を拭えるのかと、散歩を口実に喜びそうなものを考えていた」 あの時、そのようなことを思い、自分を急に誘ったのか。 思っていた以上に気を遣われていたのだと気づかされる。

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