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「だが、今度は緊張しているらしいことに気づいて、どうしたら緊張が解れるのか、私が原因であれば回数を重ねれば解消されるし、喫茶店が原因であれば、場所を変えたらどうだろうと考えていた」
御月堂と姫宮の感覚が違い、落ち着かないかもしれないと場所を変更したという旨を思い出す。
そして、俊我と一緒にいた時、そのような場所に訪れたことがなかったため、その仕事とはいえ、気を遣われたことに想ってはならない感情が芽生えてしまったことも。
「それらは全て仕事だと、果ては将来の子どもに繋がるだろうと思い、お前に会う回数を増やしていった最中、突然表情を緩めたお前を見た時、心臓を鷲掴みにされた」
その時のことを思い出したのか、さりげなく自身の胸を掴んでいた。
「泣いた時もこの辺りが針に刺されたかのように痛み出した。しかし、今回はその時とは違うもので、それが何なのかと考えるのと同時に、お前のことが浮かんでいた」
どきり、と鼓動を感じる。
御月堂のその感覚は恐らく⋯⋯。
「その原因を探りたいと出来る限りお前に会おうとしていた。が、そんな矢先のあのような有り様だ。⋯⋯不甲斐ない」
そう口にした途端、酷い悪夢でも見たとも言いたげに眉に深く皺を刻む。
あのような有り様、というのは、俊我と雅の聞きたくもない言葉の数々だろう。
自分のことではないから、そのような顔をしなくてもいいのに。
「御月堂様が自分のことのように責めないでください。全てはオメガである私のせいなのですから」
「いや、それこそ違うだろう」
怒りを滲ませて、姫宮の言葉を遮る。
「どんな性であれ等しくあるべきだ。オメガになった瞬間、人権が剥奪されたというのか。そうではないだろう。それにどんな言葉を並べても、姫宮。お前の傷ついた顔を見たくない」
今度は姫宮の手を両手で包み込むようにして、真っ直ぐ見つめられる。
特に雅に言い放った時もそうな気がするが、名前を覚えているとは思わなく、それだけでも喜んでいる自分がいる。
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