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傍観していたのだろう、それを突然遮ってまで声高らかに言った。 「私は、姫宮様の幸せを一番に願っております!」 安野がそう言ったのを皮切りに、他の三人も「私も」と口々に言い、大いに頷いた。 「お前達⋯⋯また邪魔をしてくるのか」 「僭越ながら御月堂様。私達も御月堂様と同じような気持ちなのです。そして、あなた様の幸せも。それらを私達は全力で支えて参りますので、どうか御無礼を」 「今回だけは許そう。今回だけは」 仕方なしといったように、ため息混じりに言う御月堂達に微笑を漏らした。 「ありがとうございます。これもきっと幸せだというのでしょう。嬉しい気持ちでいっぱいです」 そう言葉にすると、皆が皆揃って満面な笑みを見せてくれた。 この人達は最初から優しい。素直になれなかった分も含めて、この人達に恩を返せたら。 このようなことを思うのも、この人達に出会ったことがきっかけだった。だから、あの子にも。 「愛賀?」 御月堂に呼ばれたものの、振り向きもせず、身を屈めて目線を合わせた。 「た⋯⋯大河」 姫宮からそっぽ振り向いたままの我が子に、緊張気味に声をかける。 こんな言い方では、かえって警戒されてしまう。 己を叱咤し、改めて声をかける。 「今まで一緒にいられなくてごめんなさい。大河にとっては初めて会った人だけど、君のママなんだ。急にママだなんて思えないけど⋯⋯仲良くしてくれたら嬉しいな」 そっと手を差し出す。 完全に拒絶しているようで、こちらに見向きもしない。 小口が気を遣って声をかけてくれているが、小口の胸に顔を埋めたままだった。 仕方ない。御月堂と会ううちに少しずつ言葉を交わしたように、触れ合っていったら、そのうち慣れていくと思いたい。 苦笑し、立ち上がろうとした。その時だ。

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