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3.
「おはよ〜うございま〜す······」
寝ぼけ眼の小口が、いつものように大河を抱き上げたまま部屋に入ってきた。
「おはようございます、小口。まだパジャマ姿じゃないですか。早く身支度を整えて来なさい」
「わたしがそうする前に大河さまを、姫宮さまにお会いさせようと思ったんですよー」
そういえば、大河の服装は普段着に着替えられており、髪も整っている。
意外とちゃんとやってくれている。
「大河さま。ママさまにおはようございますと言ってみましょうか」
「·········」
むっと口を引き結んだまま、こちらの様子を伺うように見つめていたかと思えば、興味が失せたかのようにふいっと顔を背けてしまった。
今日もしてくれなかった。
「ダメですかー」
「······仕方ありません。今日もお願いできますでしょうか。どちらにせよ、発情期 が近くて一緒にはいられませんが」
「そうだったのですか、だからお顔が赤くて。わかりました」
大河を姫宮の隣に、とはいえどもやや離れれて座らせた後、「わたしは身支度を整えてきますので、大河さまはママさまと先に食べてくださいね」と言い残して、部屋を後にした。
「·········」
ダイニングの朝食を準備する音を遠くに、二人の間が余計に静かに思える。
まだ姫宮に対して他人だと思っているので、緊張しているらしく、揃えた膝上に両手を拳にして俯いていた。
ここはこちらから話しかけないと。
いつぞやかの御月堂と少しずつでも仲良くなっていったように。
「大河。今日ママは具合が悪くて一緒にいられないんだ。また小口さんと一緒に遊んでもらってね」
「·········」
「小口さん、優しいでしょう。ママもね、何かと助けてもらったんだ。あの時は本当、嬉しかった」
「·········」
「さ、最近、大河は積み木で遊ぶのが好きみたいだね。ママの具合が良くなったら、一緒に遊んでもいい?」
「·········」
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