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第7話

「おはよう」  翌朝、アイロンをかけた新聞をお持ちすれば、昨日の事など無かったかのように、華麗に笑みを湛えているジェフリー様がいた。俺は夢を見ていたのかと思ったが、違うとすぐにかぶりを振り、努めて無表情を保ち、この日から距離を置き、観察する事にした。日中の仕事以外では、決して二人きりにならないようにも注意した。それに気づいているのだろうに、ジェフリー様は何も言わない。  そうして三ヶ月、半年、一年と経過した頃。  俺は、ジェフリー様には老化が見られない事を確信した。  今日も銀器を拭きながら考える。 同時に、体を求められたのが、本当に夢魔という存在だからなのかと考え始めた。  そうであるならば――それは、本当に食事がしたいという趣旨なのだろうか?  何故なのかそう考えた時、俺の胸が疼いた。結果、俺は残酷な現実に気が付いた。  好きか嫌いかでいうならば、俺はジェフリー様が勿論好きだ。恩も感じている。  だが……肉欲ならまだしも、本当にただ純粋に、俺の精気というものを食べたいというだけならば、ジェフリー様には、俺に対する愛情など無いのだろう。俺は、己の中に存在する好意に気づいた瞬間、失恋を悟った。 「……」  その夜、俺は決意して、ジェフリー様の寝室を訪ねた。まだ、待っていてもらえるのかは分からなかったが。ノックをするとすぐに声がかかり、俺は静かに中へと入った。するとジェフリー様が微笑した。 「食事を提供する気になったのかな?」 「……」 「君は無言が好きだね。初めて会った日もそうだった」 「……」 「エドガー、おいで」  穏やかな声でそう言われた時、俺は抗いがたい衝動に駆られた。そして寝台に座っているジェフリー様の正面に立った。すると軽く腕を引かれた。 「いい子だね。そう、君はいい子にしていれば良いんだよ。全部僕に任せれば良い」 「っ」  それからすぐに、俺は寝台の上へと押し倒された。 「ずっとこの夜を、僕は待っていたんだ。君を味わう夜が来る事を、ね」  俺の服を開けたジェフリー様は、そう言うと寝台脇から香油の瓶を手繰り寄せた。俺は覚悟しながら、体を硬くする。萎えきっていた俺の陰茎にぬめる手で触れたジェフリー様は、それから鈴口をぺろりと舌で舐めた後、唇に含んだ。  そうして咥えたままで、俺の反応を窺いながら口淫を始めた。これが本当に食事になるのだろうかと考えながらも、俺の体はすぐに反応し、そして射精した。  肩で息をしていると、ジェフリー様が飲み込んだのが分かった。上下した喉仏を見て、気恥ずかしくなって、俺は顔を背けた。 「うん、美味しい」 「……そうですか」 「明日も、待っているよ」  この夜から、俺は毎晩ジェフリー様の寝室へと向かった。  最初は口淫されるだけだったのだが、その内に全身を愛撫されるようになり、そして後孔を解されるように変わった。  そうしてさらに一年を経て、現在俺は二十四歳だ。

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