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第15話

「悪いがそれは断る。別のならいいぞ」 「駄目元だったがやはり無理か…ならばせめて戦時には参加してはくれないか」 「んー、そんなに俺が必要か?さほど大したことはしてないつもりなんだが」 「お前には分かるまい。天使共の聖力は一度でも食らったら悪魔には致命傷だ」 「ふーん。ま別にそれでいいならいいけど、後から文句言うなよルシファー」 「わかっておる」 話に区切りがつくと、散歩を中断して帰路に向かう ルシファーは門の前までネルガルを案内すれば、支配人が固く重い門を開かせた 「明日はリュミも連れてくる。忙しいか?」 「良い、気をつけて来なさい。天使を欲しがる奴はわんさかいるぞ」 「俺から取ろうなんて奴はいねぇよ」 そう言ってネルガルは飛び立つ その様子をしばし眺めていたルシファーだったが、ネルガルが見えなくなると使用人の1人に声をかけられる 「ルシファー様、まだお仕事が残っております。明日もネルガル様のお相手をされるなら、今日中に終わらせなければなりません」 「はぁ、わかっておる」 ルシファーは渋々と踵を返して城に戻る その表情は先ほどネルガルに向けられていた穏やかさは一切なくなり、再び王に似合う威厳のある顔へと戻っていた 「もういいだろグリフ、いったい何着目なんだそれは」 「何を言いますかネルガル様、せっかく初めてのお出かけですよ?おめかししていかないと!」 そう言ってグリフは何着目かもわからない服をリュミエルに着せていく 喋らずともリュミエルの表情も、うざったらしそうにしているのが目に見えた それでもお構いなしに次々と着せていくが、結局グリフは迷いに迷った挙句に、最初に着せたシンプルな黒と白でまとめた服で、控えめなフリルのシャツにショートパンツと、黒いリボンがよく映える物を選んだ 「いいですね。真っ白な髪によく合います」 「まあ、いいんじゃないか」 遅い、と文句を言っていたものの、人形のように着飾ったリュミエルを見て、ネルガルも思わず肯定してしまう リュミエルはと言うと、あまり着慣れない服が気に入らないのか、窮屈そうに袖や襟をもしゃもしゃと触っていた 「すごく不満そうですね」 「天使は服を着る習慣がないからな、嫌なんだろう」 「リボンを緩めてあげますか。ほら、どうですか?」 グリフがリュミエルの襟に巻きつくリボンをシュルっと緩めてやると幾分かましになったのか、リュミエルはもしゃもしゃと触るのをやめた 「よし、それくらいにしてそろそろ行かなきゃな」 「そうですね。はあ、私も行きたかったです」 「どうせこれから毎週行くんだ。またの時に来ればいいだろ」 「…それもそうですね。来週のために、仕事を、終わらせなくては」 明らかにずんっと落ち込むグリフをよそにネルガルはリュミエルを抱え上げると、部屋のバルコニーからひょいっと外に出る 反射でリュミエルが抱きつく力を強めたが、ネルガルの背に生える大きな翼を見て、落ちることはないと理解したのか、再び腕の力を緩めた 「気をつけてくださいね!落とさないように!」 「馬鹿言え。俺をなんだと思ってるんだ」 バルコニーからそう言い放たれネルガルは内心腹がたったが、今はルシファーを待たせてしまっているため、小言は帰ってきてから伝えようと考えた 「しっかり掴まっとけよ?リュミエル」 「ん」 リュミエルがこくんと頷くのを確認してからネルガルは城を飛び立った

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