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第18話

「起きたのか、ネルガル」 「ああ、喉は治るのか?」 それよりも、というようにネルガルは本題を急かす 寝起きとは思えないほどいつも通りギラリと光るヘビ目が2人に向けられる リュミエルは内心、 この人、本当は最初から寝てなんかいなかったんじゃないか? と思うほどその目は生き生きとしていた 「そうだな、包み隠さず言うと、今は治せない」 「えーーー、なんだよ」 ルシファーがそう言うと、途端に不機嫌になり、じゃあもういいやと、興味が無くなったかのように再び寝転がる 自分の思い通りにならないからと駄々をこねる姿は、まるで子供そのものだ 「そう拗ねるなネルガル、"今は"治せないだけだ」 「なんだよ、意地悪で言ってるわけじゃないのか?」 なぁんだ、と再び目を光らせるネルガル ほんとにこの人は悪魔なのか? リュミエルには反抗期真っ只中のクソガキにしか見えない 「そんなこと私がするわけなかろう」 「じゃ早く治せよ。ただの火傷だ、魔法かなんかでちょちょいだろ?」 「そんな簡単なものではない。…まあ出来るがな。ただ声が出ないのは火傷だけが原因ではなさそうだ」 「と言うと?」 「呪いの類だ。解くには少しばかり手間がかかる」 「ええ、めんどくせぇ」 気怠げに返しながらも、治さないという選択肢はないようで、ルシファーに、どうすればいい?と聞く 「呪いを解くには、かけた本人が解除するか、死ぬかしかない」 「ああ、それは知ってる。つまりそいつを殺せばいいんだな」 「おそらくそれは無理だ」 ルシファーは髭をいじりながら言いづらそうに口を開けた 「おそらく…私の予想に過ぎないが、呪いをかけた奴は………ミカエルだ」 「はあ?ミカエルだと?」 ネルガルは意外な返答に明らかに同様してみせた 一方リュミエルは、途切れ途切れに魔界語を聞いていたが、いきなりミカエルと言う名前を聞いて飛び上がる ミカエル様の話をしてる……? しかもネルガルはミカエルの名を聞いた瞬間、今までにないほど嫌そうに顔を歪ませていた それもそのはず、ミカエルは上級天使。 魔界の魔物が束になって押し寄せようとも、涼しい顔でなぎ倒すことのできる力の持ち主である。 おそらくルシファーと同等、もしくはそれ以上に強い。 簡単に勝てる相手ではないとわかると、ネルガルは目に見えてわかるように肩を落とす 「どうにかなんねぇか?」 「たった一匹のお前のペットのために、全面戦争になるのはごめんだ。下手をすれば全滅だぞ」 「そんなんわかってる。他に方法は?」 「ないとは言い切れないが私は専門外だ。詳しい者に聞くのが手っ取り早いだろう」 そう言われてしまえば、もうなす術がない。 これ以上の進展はないと判断すると、リュミエルの日光浴もほどほどに、今日はお開きにすることにしたようだ リュミエルは2人の悪魔に挟まれリラックスも何も出来なかったが、ところどころの体の不調はすっかりなくなっていた 「また来週連れて来る」 「ああ」 最後にルシファーはネルガルに抱かれるリュミエルの頭を優しく撫でると 『また来なさい』 と天界語で言って2人を見送った 思ったより悪い人じゃないのかも… ネルガルに抱かれる帰路の途中、リュミエルはそんなことを考えた どちらにせよ、できればもう会いたくない。 長いようで短い1日だったと、体の疲れを紛らわせるように深いため息を吐いた

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