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第一章(八)電子辞書

 次の日、(みゆき)が顔に湿布を貼ったまま店に来た。 「どうしたんだい?」  驚いて優一(ゆういち)が聞くと、幸は悩んだ末に小さな声で答えた。 「転んだ……」 「痛かっただろう?」 「少し」  幸は答えてから、優一の視線を避けるように俯いた。  優一はまさか日下(くさか)が手を上げるとは思ってもみなかったので、幸の言葉を疑いもしなかった。  それから、優一は今日の仕事の事を考える。  優一は幸を連れて行くつもりでいたが、顔に湿布を貼ったままでは、連れて行く訳にもいかない。 「今日は幸は奥の部屋で休んでおいで。仕事は僕一人で行くから」  幸は少し残念そうな目をしたが、素直に頷いた。  その日は仕事が忙しく、優一はあまり幸をかまう事が出来なかった。  一方、幸はというと、奥の部屋にある鍵で遊んでいた。  しかし、そこにある鍵は一通り解錠しているので、さほど面白い訳ではない。  そこで、幸は目に付いた鍵の開け方の本に手を伸ばした。  幸は頭が悪いという訳ではないが、ほとんど学校に行っていないので、勉強はあまり出来なかった。  それに、イラストなどが載っているとはいえ、大人の読むような本は、まだ小学生の幸には難し過ぎる。  それでも、分かる文字や単語を拾いながら、本を読み進めて行った。  結局、仕事が落ち着いたのは、閉店の一時間前だった。  まだ時間はあるが、もう十分仕事をしたと、少し早いがシャッターを下ろす事にした。  仕舞い仕度をすませ、優一が真っ直ぐ奥の部屋に行くと、幸は一生懸命に本を読んでいた。  その本は幸にはまだ難しいだろうと思うのに、優一が来ても気付かないくらい読む事に集中している。 「ただいま」  声をかけても反応がなかった。  優一は幸の肩を叩いてもう一度話しかける。 「ただいま」  幸はやっと気付いて優一の方を振り向いた。 「おかえり」 「面白いかい?」  優一はそう言って本を覗き込む。 「はい」  幸は目を輝かせて答えた。 「何が書いてあるか分かるかい?」  幸は首を横に振った。 「ちょっと待って」  優一はそう言うと、引き出しの中をガタガタと探した。 「あった!」  笑顔で振り向いた優一の手には、電子辞書が握られていた。 「これで調べながら読むといいよ」  優一は幸を膝の上に乗せると目の前のちゃぶ台に置いた。 「今から使い方を教えてあげよう」  優一は首元で荒い息を吐き、片手で幸の体をまさぐりながらも、丁寧に使い方を教えた。  しかし、そうして教えているうちに、優一は激しく欲情して、幸をどうにかしたいという気持ちを抑える事が出来なくなった。 「幸」 「何?」  幸が名前を呼ばれて振り向くと、優一は幸に深く口付けた。  優一は逃げようとする幸を抱きしめて、思うままに口の中を犯した。 「んっ」  いくら押し戻そうとしても、子供の力などたかが知れている。  優一は幸を畳の上に組み敷いた。 「僕の事が好きかい?」  聞かれて、幸は戸惑いながらも頷いた。 「いい子だね。僕も幸の事が大好きだ」  優一は幸の服を脱がせると、体中を舌でなぞった。 「いい子にしていたら、もっと仕事を教えてあげるからね」  幸は優一も仕事も両方好きだったので、抵抗をやめて大人しく従う事にした。

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