17 / 103

第一章(十七)新生活

 優一(ゆういち)は、日下(くさか)にはしっかりと言い聞かせておいたので、また(みゆき)に暴力を振るうとは思ってもみなかった。  まさか、優一が幸に恵を重ね合わせている事に、日下が気付いているとは思いもしなかったので、どうしてここまで腹を立てているのか全く分からなかった。  もう一度、日下に言い聞かせた方が良いのではないかとも考えたが、幸は家に帰る事はないのだから、この件に触れる必要はないだろうと、あえて何も言わない事にした。  優一は店に着くと、幸を二階に連れて行った。  久しぶりに見た(めぐみ)の顔は、酷く疲れている様子だったが、泣いている姿は儚げで、とても魅力的だった。 「幸、疲れただろう?」  優一は布団を敷いて、幸を寝かせると、自分も隣で横になった。  そして、改めて幸の顔を見る。  実際に並んでいる二人を見比べたが、本当に幸は恵とよく似ていた。  女の体でないのが残念ではあったが、幸の体も十分に魅力的だった。  優一は幸に口付ける。 「怖かっただろう?」  幸はこくりと頷いた。  優一が幸に触れてみると、体が小刻みに震えていた。  そして、幸は優一にそっと寄り添ってくる。  自分に懐いて身を寄せる姿は、堪らなく可愛かった。 「もう家には帰らなくていいからね」 「はい」 「ここにいたら、僕が幸を守るから心配ないよ」 「おじいさん」  優一は、しがみついてくる幸をそっと抱きしめた。 「もう怖くないよ」 「ありがとう」  幸は堪らなく愛おしかった。 「僕と一緒に寝るかい?」 「はい」  幸は優一の服を掴んだ。  おそらく幸は意味を取り違えているのだろうが、優一はかまわずその体を抱きしめた。 「可愛いね」  恵の代用ではあるが、幸も愛しい事に変わりはない。  優一は幸の体をまさぐりながら耳元で囁く。 「気持ちいい事をしようか」  幸はその言葉の後に何をされるか分かっていたので、返答に困って優一から目をそらした。 「大丈夫。怖い事を忘れさせてあげるから」  幸はこくりと頷いた。  優一は幸の服を脱がせると、自分も服を脱いだ。  裸で抱き合うと、子供の少し高めの体温が肌に心地よかった。 「幸は僕の事をどう思っているんだい?」  幸は恥ずかしそうに目をそらす。 「大好き」  その恥じらうような仕草など、どこまでも幸は魅力的だった。 「僕も好きだよ」  優一は自分のそれを幸の股間に擦り付ける。 「可愛いね」  そして、幸の首筋に顔を埋める。 「愛してる」  幸は耳元に優一の荒い息がかかって、くすぐったそうに顎をそらした。 「堪らない」  優一はさらに腰を擦り付ける。 「気持ちいいよ」  幸は股間が擦れる感触が気持ち悪くて身をよじったが、優一は幸の体を布団に押さえつけた。  そして、耳元で囁く。 「幸、この前と同じ事をしようか」  優一は体勢を変えると、後ろの穴を舐め始めた。 「やっ」  幸は気持ちが悪くて身悶えるが、優一は許してはくれなかった。  優一は恵の事を想像して止まらなくなっていた。  幸が怖い目にあったばかりと言う事も、今の優一にはどうでも良かった。  怖い事を忘れさせると言ったのも、ただの方便に過ぎなかったが、気持ち良くなれば何も考えられなくなるだろうから、あながち嘘でもないだろうと考えていた。  しかし、幸はそんな事とは知らず、優一の言葉を信じて、ひたすら耐えて大人しく従っていた。 「気持ちいいだろう?」  優一は指を一本入れてから様子を見ると、さらにもう一本指を増やした。 「前より開くようになったね」  そして、二本の指で幸の中を刺激した。 『やめて』  叫んだ筈の言葉の変わりに、変な声が幸の口をついて出た。 「やっ、ああっ……」  幸は下半身から突き上げる刺激に、頭がおかしくなりそうだった。 「後ろだけでこんなに感じて……」  優一は幸の反応を見ながら、執拗にそこを弄り続ける。  幸は助けを請いたかったが、口を開けばおかしな声しか出ないので、口をつぐむしかなかった。  幸はどうしていいか分からず、顔を隠していやいやをした。 「そんなに気持ちいいかい?」  優一は自身を手で扱きながら、幸の性器を口の中で愛撫し始めた。 「はっやっああっ」  幸は何度も何度もよく分からない刺激に貫かれ、体も頭もとろけそうになるのを必死で耐えた。  それに負けたら何かに引きずられそうで、幸は怖くて堪らなかった。 「僕もいきそうだよ」  優一は幸の思いなど意に介さず、快楽に溺れて自分の手の中で果てた。  欲望を吐き出して満足したのか、優一は幸の上に覆いかぶさるように抱きついた。 「忘れられたかい?」  優一に言われて、幸はすっかり日下の事が頭からなくなっていたのに気付いた。 「はい」  幸は優一との行為が嫌だったが、こんな事をしたのは自分の為だったのだと思うと、不思議と嫌な気持ちもなくなった。 「良かったね」  疲れた体に優一の重みはつらかったが、幸にはそれが愛の深さのように思えた。 「おじいさん、大好き」  幸は優一の背中に腕を回して抱きついた。

ともだちにシェアしよう!