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幸福論 第一章(二十一)手作り弁当 | 汐なぎの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
幸福論
第一章(二十一)手作り弁当
作者:
汐なぎ
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第一章(二十一)手作り弁当
恵
(
めぐみ
)
は月に一度は必ず、
工面
(
くめん
)
して貰っている金を受け取りに
優一
(
ゆういち
)
の店を訪れた。 その日はパート帰りにそのまま店に寄って、夕飯を三人で食べるのが習慣になっていた。 他の日も様子を伺いには来るが、万が一にも
日下
(
くさか
)
にバレてはいけないと、顔を見て帰るくらいしか出来なかったので、この日は
母子
(
おやこ
)
でゆっくり会える唯一の時間だった。 そして、今日は恵が店に来る日だったので、優一も
幸
(
みゆき
)
もそわそわしていた。 恵が来るのは、大体十九時半で、店の閉店時間は十九時なので、いつもはゆっくりと出迎える事が出来るのだが、終わるのが少し遅くなったのでバタバタしてしまった。 「こんばんは。あまり来られなくてすみません」 恵が顔を出すと、まず幸が迎えに出た。 「お母さん!」 「幸。久しぶり」 幸が恵の傍に走って行くと、恵は軽く抱きしめて背中を叩いた。 その後、店の片付けを終えてから、優一がゆっくりと顔を出す。 「恵ちゃんこんばんは。その後はどんなだい?」 優一の問いかけに、恵は苦笑する。 幸を優一が引き取った日、日下は酷く腹を立てた。 恵が例の一件を優一に話したのは明白だったし、そもそもの発端は優一が幸を抱いた事なのだから、腹を立てるのも無理はなかった。 それを知った時、日下は酔っ払っていた事もあって、とうとう恵を平手で叩いてしまった。 しかし、手を上げたのはその一度きりで、以降は代わりに、酷く酔った時だけではあるが、物にあたるようになって、それがずっと続いている感じだった。 「あれからは、相変わらずです」 「そうか。すまないね」 「そんな。こっちこそすみません」 優一に謝られて、恵が申し訳なさそうに言う。 しかし、優一がこの状態を作り出した元凶なのだから、お金や幸の面倒を見るくらいは当然の事だし、むしろそれだけでは釣り合わないような事をしているのだ。 それに、優一は恵に恋心を抱き、幸に手を出す事でその気持ちを満たしているので、恵に月に一度会える上に、幸を毎晩抱ける今の状況は、むしろ喜ばしい事だった。 「気にしなくていいよ」 けれど、何も知らない恵は、助けて貰っているとばかり思っていたから、少しでも何か出来ればと思ってしまう。 「こんな事しか出来ませんが」 恵はそう言いながら、朝作っておいた弁当を差し出した。 「いつも悪いね」 優一はさり気なく恵の手に触れつつ、弁当を受け取った。 優一は茶を入れると、和室のちゃぶ台に温めた弁当を並べた。 恵の作る料理は、亡くなった母親の影響で和食が多い。 そして、幸も恵の影響で和食が好きだった。 しかし、優一のところでは出来合いの弁当ばかり食べていたので、恵の弁当は幸にとっては、大のご馳走だった。 里芋の煮付けに、きんぴらごぼう、牛肉のしぐれ煮、ほうれん草の
胡麻和
(
ごまあ
)
えが、今回の弁当の内容だった。 幸は豪勢なおかずに目を輝かせた。 「お母さんありがとう」 その後、皆で手を合わせて、食事をしながら、
団欒
(
だんらん
)
のひと時を過ごした。 「幸、おじいさんの言う事を聞いていい子にしてる?」 「はい。いい子にしてるよ」 むしろ、幸はいい子すぎるくらいだ。 それが元で、優一にいいように利用されている事など、恵には想像もつかないに違いない。 しかも、優一はこの日の夜は、幸を恵に重ね合わせて、いつも以上に激しく抱くのだ。 それでも、全く抵抗しない幸は、優一にとっては都合のいい子だった。 「仕事も出来るし、助かってるよ」 しかし、優一はそんな事はおくびにも出さず、涼しい顔で返事をした。 そして、会話をしながら、さり気なく恵を観察する。 セーターはピッタリとしているので、恵の華奢な体のラインがハッキリと分かった。 こぶりな胸にくびれたウエスト、そこから繋がるヒップのライン。 優一は、幸にはないそれらの特徴を脳裏に焼き付けた。 食事が終わると、恵は頭を下げて、何度も礼を言いながら家に帰って行った。 優一は、寂しそうに目を伏せる幸を後ろから抱きしめる。 「僕が慰めてあげるよ。だから、上に行こうか」 そして、もう我慢出来ないと膨らんだ股間を押し付けて、幸に荒い息を吐きかけた。
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汐なぎ
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