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第三章(七)健気な態度

 多田(ただ)は余程、(みゆき)の事を気に入っているらしく、翌日も日下(くさか)の部屋を訪れた。 「様子はどうだ?」 「日下は昨日から怯えてうずくまったままです」  沢井(さわい)が答えるが、多田は日下を一瞥(いちべつ)すらしない。  代わりに、こんな事まで言わなければ分からないのかと言いたげに、沢井を(にら)みつけた。 「幸はどうしていた?」  多田に気圧(けお)されて、沢井は一瞬口ごもる。  バレてはいないと思うが、昨夜の風呂場での出来事も頭をよぎった。 「体を洗って、食事を食べさせておきました」  沢井は緊張して答えるが、多田は詮索するつもりはないらしい。  多田は「そうか」とだけ言うと、幸の傍に行った。 「シーツは血まみれで、まだ取り替えてません」  沢井が、多田の背中に慌てて声をかける。 「構わない。終わったら替えてくれ」  元々綺麗なシーツではなかったのだから、今更汚れていたとしても多田にはなんの問題もない。  それに、多田にとっては、そんな事よりも幸を抱く方が優先だった。 「昨日は痛い思いをさせて悪かったな」  そう言うと、多田は幸を立ち上がらせて、寝室に連れて行った。  多田は部屋に入ると幸に深く口付けた。  すると、幸の口から微かな吐息が()れる。 「んっ」  幸は堪らない色気があり、多田はその様子に魅せられて、長い長い口付けをした。  その後、幸を誘ってベッドに向かうと、多田はベッドの端に腰掛けた。  そして、目の前に立つ幸の服を脱がせながら、その体を舌でなぞる。  キメの細かい滑らかな肌の感触が多田を虜にした。  しばらく、その肌を堪能してから、多田は幸を自分の前に座らせたる。 「昨日は怪我をさせてしまったからな。今日は後ろは使わないでおこう」  多田はズボンを脱ぐと、幸の手を自分の性器にあてがう。 「舐めてごらん」  幸は言われて、恐る恐る舌を()わせた。 「いい子だ」  多田は幸の頭を()でながら、恍惚の表情を浮かべる。  必死に()める姿は健気で愛おしく、多田はその様子に激しく興奮した。  しかし、気持ちは(たかぶ)っていたが、幸の舌だけではいけそうにもない。  優しくしようと思っていたが、多田は欲望を抑える事が出来なくなった。  多田はゆっくりとベッドから立ち上がると、幸に命じる。 「(くわ)てみろ」  多田のものは幸の口には大き過ぎたが、それでも懸命に口に入れた。  すると、多田は幸の頭を掴んで容赦なく腰を激しく動かし始めた。  多田は幸に優しく接する事もあったが、結局のところ全ては気紛れでしかない。  愛しいと思う気持ちがない訳ではないが、自分の欲望の前にはそんなものは消えてしまう。  そして、多田の欲求を満たすのに、大人しい幸はとても都合が良かった。  幸は喉の奥まで突き上げる苦しさに涙を流すが、多田はその様子を見てもやめる気は全くなく、むしろそれに興奮し、更に激しく腰を動かした。  そして、多田は絶頂に達すると、やっと幸を解放した。  しかし、幸は解放はされたが、喉の奥に射精された為、苦しそうにうずくまると、口から体液を吐きながら激しく咳き込んだ。  多田は苦しむ幸を見て、懸命に奉仕していた様子を思い出し、堪らなく愛しいと思った。 「よく頑張ったな」  そして、多田は幸の背中を優しくさすった。  多田が寝室を出た時、ちょうど沢井がシーツを探り当てたところだった。 「何をしているんだ?」 「替えのシーツを探していました」  聞かれて沢井が答えるが、多田は興味もなさそうに横を向いた。  すると、日下は怯えながらも多田の方に近寄り、その前まで来ると慌てて土下座をする。 「昨日はすみませんでした。あんな事は二度としませんので」  日下は多田が何も言わないのを許してくれたと勘違いし、安心したように顔をあげると、手を擦り合わせながら声をかけた。 「それで、今日のお金は……」  多田は日下が言い終わる前に、無言で蹴り飛ばした。 「ひっ!」 「クズが」  多田が吐き捨てるように言って財布から札を投げ捨ると、日下は這いずるようにして札を拾い始めた。  日下の様子を多田は(さげす)んだ目で一瞥すると、すぐ玄関に向き直った。 「また来る」 「はい」  沢井が見送りに出ようとするのを多田が制す。 「今日はここでいい。それより、しっかり見張っておいてくれ」 「はい」  沢井は返事をすると、頭を深く下げて多田を見送った。

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