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第三章(十三)初めての仕事

 (みゆき)は事務所に行っては多田(ただ)に抱かれ、部屋に帰っては沢井に抱かれた。  しかし、そんな生活を繰り返してはいたが、幸は単なる性処理の人形として飼われていただけではない。  幸は、まだ大きな仕事はしていなかったが、構成員が盗み出して来る携帯金庫の鍵をいくつも開けて来た。  幸にとって鍵開けの仕事は、優一が死んで以来、久しぶりの事だったので、楽しくて仕方がなかったし、褒められる事も堪らなく嬉しかった。 「流石だな」  多田は幸を抱きしめて口付ける。 「ありがとうございます」  言われて、幸は照れたように笑う。  しかし、多田はその笑顔に顔を(しか)める。  幸は何も知らないような顔をしているが、多田に隠れて沢井に抱かれているのだ。  沢井が黙っている事は許せるとしても、幸の裏切りを許す気にはなれなかった。  あくまでも、幸は多田にとって奴隷なのだ。  もしも、幸に鍵開けの才能がなかったら、もっと乱暴に扱って、壊してしまっていたかも知れない。  それで助かったとも言えるが、更に食い物にされる事になったのも確かだった。 「幸」 「はい」  幸が返事をして振り向くと、多田が告げる。 「今度、大きな仕事がある」  幸は何か分からず、不安そうに首を(かし)げるが、次に言った多田の言葉に顔を明るくする。 「難しい金庫の鍵を開けられるぞ」 「本当ですか?」  まだ善悪の区別がつかない幸にとって「仕事」は最高の楽しみなのだ。 「ああ。幸もきっと気に入ると思う」 「金庫は何処ですか?」  幸がキョロキョロと、部屋を見回すのを見て、多田が頭に軽く手を乗せた。 「ここにはない。今から、その話をしよう」  そして、多田が告げると、幸は笑顔で(うなず)いた。  今回の仕事の内容は、とある金持ちの邸宅に貴金属を盗みに行くというものだった。  そもそも、この組織の仕事は盗んだ物の転売だったり、金品の強奪だったりする。  その中には組織が独自で目星をつけた物を盗んだり、依頼された物を手に入れたりして、それらを転売するのが主な仕事だった。  金品の調達を外に依頼して、それを買取って転売する事もあるのだが、それだと相手に金を支払わねばならず、組織の収入が減る。  それなら、自分達が直接手に入れればいいのではないかと考え、この組織ではずっとこのスタイルでやっていた。  そして、今回は依頼されて、全てをこの組織の中でやる仕事になる。  仕事を任されたのは幸と二人の構成員。  あらかじめ家の間取りも金庫の場所も調べてある。  一人は近くに車で待機し、幸は後の一人に連れられて侵入する手筈(てはず)になっていた。  セキュリティの事もあり制限時間はあったが、それほど難しい仕事ではない。  成功の鍵は幸にかかっていたが、多田は幸の腕をかっていたから少しも心配してはいなかった。 「大丈夫、必ず上手く行く」  多田は、緊張した面持ちの幸の背中を優しく()でた。  それでも幸の不安はおさまらない。 「多田さん」  幸は名を呼んで、多田の服を掴んだ。 「時間だよ。行っておいで」  多田はそう言って、幸を落ち着かせるように、優しく口付けた。  幸は上手く行くかと心配していたが、侵入先での仕事は、案外あっさりと片付いた。  それと言うのも、幸が簡単に金庫を開けたからで、一緒にいた構成員があまりの手際の良さに驚いた程だった。  予定より早く邸宅から出ると、幸は構成員の一人に連れられて、仲間の待つワンボックスに乗り込んだ。 「早かったな」  待機していた男が、車に戻って来た男に言う。 「ああ、幸の仕事が早かったからな」  そして、戦利品を運転席に向けて見せると、興奮冷めやらぬ、と言った感じで続ける。 「それにしても、見事な手際で驚いたよ」 「思ったより早く終わったのはそれでか?」  言われて、男は幸の肩を抱く。 「幸は天才だよ」  幸は褒められて恥ずかしそうに(うつむ)いた。  そうして、しばらく走って、車は事務所に到着した。  事務所に帰ると、多田が幸を迎えに出る。 「おかえり。よくやったな」 「ただいま」  そう答えると、幸は多田に褒められた事に照れて、恥ずかしそうに下を向いた。 「どうした?」  多田は幸に尋ねると、顔を上げさせて口付ける。 「初仕事で緊張したか?」  幸は確かに緊張はしたが、それ以上に仕事が楽しかったので、かぶりを振って答える。 「楽しかったです」 「そうか」  そう言って、多田は満足そうに頷くと、幸をそっと抱きしめる。  それから、構成員に向き直ると、今回の首尾について聞いた。  多田の言葉を受けて、現場を見ていた構成員が興奮気味に、幸の仕事について詳しく説明した。  多田は話を聞いて、予想以上の成果に思わず笑みを浮かべる。  そして、多田は幸を連れて執務室に行こうとしてから、戦利品の置かれた机の前で立ち止まる。 「戦利品を照らし合わせてくれ。後は頼んだ」  それだけ言うと、多田は執務室に消えた。  多田はドアに鍵をかけると、待ちきれないと言うように幸の服を脱がせ始める。  幸の手際の良さを聞き、多田は思った以上の成果に興奮して、抱きたいという思いを我慢できなくなったのだ。 「いい子だ」  多田は幸をソファに押し倒すと、幸のズボンを下ろして後ろを解した。 「入れるぞ」  そう言って、幸の足をとると中に入って行く。 「気持ちいいか?」  幸は中に入って来る質量の大きさに、顔を背けて目を閉じた。 「気持ちいいです」  それでも、幸は多田の望む言葉を口にする。 「じゃあ、私の動きに合わせて声を出すんだ」  多田はそう言って、ゆっくりと腰を動かす。 「あっ」  幸の口から微かな声が聞こえる。 「もっと、大きな声を出してみろ」  多田は腰の動きを徐々に早める。 「ああっ……あっあ……ああっあ」  幸は言われるままに声を出すが、途中からは本物の喘ぎ声に変わった。 「どうして欲しい?」 「もっと激しく……奥に」  幸は多田に教えられた言葉で答える。 「いいだろう」  多田は幸の足を更に高く上げて、中を激しく突きまくった。 「やっあああ……」 「いくって言ってみろ」 「い、く……」  幸は多田に言われた言葉をそのまま口にする。 「いい子だ」  幸は奥を突かれる痛みに堪えながら、多田の指示に素直に従う。  幸は組織の構成員の誰よりも忠実な、多田の奴隷だった。 「幸、いくぞ」  多田はそう言って更に激しく腰を振る。 「い……ああっ」  幸の声とともに、多田は精を吐き出した。 「いい子だ」  多田はソファから下りると、幸の腕を引いて起き上がらせる。 「今日は疲れただろう。帰ってゆっくり休むといい」  多田は幸を抱きしめて耳元に(ささや)いた。

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