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第三章(二十)所有物

 (みゆき)は、多田(ただ)の機嫌が悪い事に気付いていた。  そして、多田は不機嫌な時、決まって幸の事を乱暴に扱う。  幸は、多田の事が好きだが、怒っている時は怖くて仕方がなく、助けを求めるように沢井(さわい)を見てしまった。  しかし、そんな態度を取っては、幸の気持ちなどバレバレだ。  当然、多田が面白い(はず)がない。  多田は執務室の鍵を閉めると、幸の(あご)をとって顔を上げさせた。 「沢井が好きか?」  幸は多田に聞かれて驚いた。  気付かれているのかも知れないと思ったが、正直に答えれば多田が怒るのは目に見えている。  それに、沢井に口止めされていた事もあったので、幸は答える事が出来ずに黙り込んでしまった。  誤魔化すような幸の態度に、多田は更に苛立ちを覚える。 「一つ自分の立場を教えておいてやろう」  多田は、幸を乱暴にソファに突き飛ばす。 「沢井がお前に手を出すのはいい。お前が抱かれるのも多めにみてやっている。だがな、お前が心移りするのを許してはいない」  多田は幸の上に覆いかぶさると、鋭い目で(にら)みつけた。 「幸、お前は私の物なんだよ」  そして、多田は幸の服を脱がせると、ファスナーを下ろして後ろから乱暴に突き入れた。  幸は堪らず、大きな息を吐く。 「今から言う事を繰り返してみろ」  多田はそう言いながら、激しく腰を動かした。 「ああっ」  苦しくて、幸の口から声が()れる。  しかし、喜んで鳴こうと、嫌がって鳴こうと、多田にとってはどうでもいい事だ。  それに、多田が今望んでいるのは、そんなものではない。 「返事はどうした?」 「分かり……ました」 「自分は私の物だと言ってみろ」  多田はそう言いながらも、幸の中を滅茶苦茶に突いた。  幸は苦しくて声が漏れそうになる。 「どうした?」  どんな状態であれ、多田の命令に逆らえば更に酷い事をされるのは、分かりきっていた。  幸は言われた言葉を(かす)れる声で復唱する。 「僕は……、多田さんの……物……です」 「そうだ。分かってるじゃないか」  多田は口元に下卑た笑みを貼り付けた。 「お前の飼い主は私だ。忘れるな」  多田は幸の中に出すと、そのまま幸の体を突き飛ばした。 「で、飼い主は誰だ?」  幸は痛む体を擦りながら上体を起こす。 「多田さん……です」  多田は立ったまま、床に座り込む幸を見下ろす。 「こっちに来い」  多田は幸を呼ぶと、ズボンを脱いで下半身を露わにした。 「(くわ)えろ」  幸は痛くて思うように足に力が入らないが、命令に逆らう事は出来ず、多田のところへ這うようにして辿(たど)り着く。 「早くしろ」  急かされて、幸は多田の足を手で伝うようにして起き上がると、それを口に咥える。  そのあまりの質量に、幸は息が上手く出来なかったが、それでも多田の命令に従うように、精一杯、口を動かした。 「いい子だ」  そう言って、多田は一心にしゃぶる幸の髪を優しく()でた。  多田は、大人しく自分の言う事に従う幸を愛おしく思う。  だからこそ、余計に幸に腹が立つし、許せないと思ってしまうのだ。 「もっとだ」  多田は幸の頭を持つと、腰を激しく打ち付けて、何度も何度も、自分がいくまで喉の奥を突き続けた。  そして、欲望の塊を幸の喉奥に吐き出すと、むせる幸を気にもかけず、四つん這いにさせて後ろから乱暴に突いた。  幸は涙を流しながら、体液なのか唾液なのか分からなくなった液体を吐き続けた。

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