67 / 103

第三章(二十五)淫らな天使

 多田(ただ)は執務室に入ると、(みゆき)に優しい声で語りかける。 「頑張ったな」 「ありがとうございます」  幸は、多田に褒められると、綺麗な顔で微笑んだ。  多田は、その笑顔に誘われるように、幸を抱き寄せて深く口付けた。  この日の多田は、幸が想像以上の拾い物である事を知り、今までにないくらい気持ちが高揚していた。  幸は、その才能といい体といい、全てが多田を魅了する。  それが、自分の所有物であり、従順な奴隷であるという事実が、多田の支配欲をかき立てた。  「ここにおいで」  多田はソファに腰掛けると、幸を膝に呼んだ。  幸は言われるままに、向かい合わせに多田の膝に座る。 「いい子だ」  多田はそう言うと、幸に口付けながら、シャツの下に手を入れて直接素肌を()でた。  そして、シャツを脱がせると、体中に口付けながら手を滑らせる。  そのまま腰まで手を下ろし、幸のズボンを脱がせると、優しくソファに寝かせた。 「可愛いな」  それから、指を湿らせて幸の後ろに入れる。  今日の多田は機嫌が良かったので、幸の扱いも優しく丁寧だった。 「あっ」  幸は中を()られて、小さく声を()らす。 「もっと声を出すんだ」  耳元で(ささや)いて、中を掻き回す。 「ああっ」  幸は先程より大きな声を出して、多田の首に腕を回した。 「私の事をどう思ってるか言ってみろ」 「好きです」  多田に言われて、幸が答える。  確かに、多田は不機嫌な時には、幸を乱暴にあつかうし怖くはあるが、幸にとっては恩人であり、何をされても好きである事に変わりはない。  幸は自分の気持ちそのままに答えたのだが、多田は不満そうに顔を(しか)めた。 「お前の気持ちは、その程度か?」  多田の機嫌が急に悪くなる。  幸は理由が分からず困惑するが、すぐに気付いて言い直した。 「大好きです……。愛してます」 「私はお前のなんだ?」 「飼い主……です」  今度は、多田は満足そうに微笑むと、中に入れていた指を抜いた。  そして、多田もズボンを脱ぎ捨てると、幸の中にゆっくりと挿入する。 「どんな気分だ?」 「気持ちいい……です」  幸は多田の望む言葉を吐いて、腰を揺らす。 「いい子だ」  多田は中を突きながら、幸の首筋に顔を埋めて唇ではむ。 「あああっ」  幸は中を刺激されて、声が漏れた。  今日の多田は本当に優しく、幸の感じるように攻めるので、快楽に刺激されて声が自然と甘くなる。 「もっと、声を出すんだ」  そう言って、多田は少しずつ激しく腰を動かし始める。 「幸も気持ち良くなるように腰を振ってみろ」  幸は言われた通りに、感じる所に当たるように腰を動かす。  堪らない快感が込み上げて来て、頭が(とろ)けて意識が飛びそうになる。  けれど、幸は込み上げる感覚に抵抗するように頭を振った。 「やっ、あああっ……」  多田は、幸の声に性欲を刺激され、優しくする筈が、自分の気持ちを抑える事が出来なくなって来た。  「幸、もっと声が出るだろう?」  そう言って、多田は欲望のまま、幸の感じる箇所を執拗(しつよう)に攻め立てる。  確かに、幸の体を傷つけるような乱暴なものではなかったが、最早(もはや)それは、快感というよりも暴力に等しいものだった。 「あっあああっ……」  幸が(あえ)ぎ声を上げて、多田の下で(みだ)らに身悶(みもだ)える。  いつもは大人しく純真そうな子供が、自分の下で乱れている姿に、多田は高揚感を覚えた。 「お前は私の物だ」  そして、激しく腰を打ち付けながら、幸の中に精を吐き出した。 「幸」  肩で息をする幸を抱きしめて、多田は激しく、深く、口付けた。 「んっ」  すると、口の端から艶っぽい息が漏れて、多田を刺激する。 「一度だけにしておこうと思っていたが、無理そうだ」  多田は幸の体中に口付けた後、再び幸に挿入した。

ともだちにシェアしよう!