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挿れて拡げて
「まずは中の様子が見たい」
そう言ってセルゲイが助手から受け取ったのは、金属でできた嘴のような形の器具だった。
「な、何それ……」
「挿れて拡げて中を観察するための物だ。さっき触った感じからして君の肛門は十分柔らかくなっているが、多少の違和感はあるかも知れない。それでも騒がないでくれよ。剣士なんだからさぁ」
アランは引き攣った悲鳴のようなものを上げたが、体の中にいるはずの魔物の位置が浅ければこれだけで取り除けると言われ、奥歯を噛みながら四つん這いの姿勢をとった。セルゲイは彼の尻に手をあてがうと、ずぶっと嘴の先端を窄まりに挿し込む。
「ひゃあっ!! なっ、お前っ、やるなら何か言えよ!!」
「ん? あぁ、悪かった。普段は口のきけない魔物を相手にしているから、つい」
そう言いながら、セルゲイは器具の根本に付いているネジをクルクルと回し始めた。
「あっ、あっ、ちょ、それ、なんかっ……嫌だっ」
ネジを回すごとに嘴の先がゆっくりと開いていき、普段空気に触れるはずのない場所が晒されていく。淡いピンク色をした直腸内は、魔物の体液で濡れてキラキラと光を反射した。科学者は神妙な面持ちで顔を近づけて眉を顰める。
「ふむぅ……やはりかなり奥にいるようだな」
「あっ、喋んなっ、息がっ」
「それにしても体液の分泌が凄まじいね。まだまだ溢れてくる。これを君は粘膜から吸収しているというわけか。……こいつは君の体の中で何をしてるんだぁ? 動いたりはする?」
拡がった穴に差し込んだ細い金属の棒で内壁を押しながら、セルゲイは反対の手をアランの腹に回して腰を引けないように固定する。
「あぁっ、触んなっ……押すなっ、やめっ」
「質問に答えてくれよ。せっかく話せるんだからさぁ。それともまた自白剤を飲むかい?」
「嫌だっ……あっ、や、質問って……っ何?」
「まったく。体の中の魔物は動く?」
「動くっ、動いてるっ……も、や……ん、いやァッ!!」
棒が前立腺を刺激して、アランは一際大きな声を上げた。自分の耳を疑いたくなるほどの甘い声が羞恥心を煽り、彼は鎖に繋がれた手で頭を抱える。
「生理現象だ。恐らくこの魔物の体液には催淫効果がある。だから恥ずかしがらなくていいよ」
「うっ、うるせぇ……おま、お前にっ、ンんっ……わかるかよっ」
腹側に回したセルゲイの手に、再び勃ち上がったペニスの先端が触れる。彼はダークブロンドの襟足から覗く首筋の後ろが真っ赤に染まっているのを見て、「やはりこういう趣味があるんじゃないのか」と小さく呟いた。
「よし。それじゃあ、このまま機械を挿れよう」
「はぁっ?! 今なんて?!」
セルゲイの言葉にアランは驚いて振り返った。
「ボクの手では届かないから助手の腕を借りるんだ」
「違っ……こっ、これ抜いてくれよ! 今入ってるやつ!!」
「いや、入り口は拡げておいたほうがいい」
「嫌……オレ、これは嫌で……頼む。体の中に空気入ってくんのが気持ち悪ぃんだよ……」
弱々しく懇願するアランをしばらく眺めていたセルゲイだったが、やがてため息混じりの声で「わかった」と呟いた。
「その代わり、もう変な抵抗しないでくれよ。さすがにやりにくい」
「あぁ、やってみる……」
「そうしおらしいのも調子狂うね」
先ほどと反対方向にネジを回して嘴状の器具の先端を閉じていく。その間もアランは目を閉じて違和感に耐えていたが、それが体の中からの抜き取られる瞬間には「んんっ」とか細く喘いだ。
「大丈夫かい? 今からこれを挿れるけど」
珍しく自分を心配するような言葉に少し安心する。しかし、アランは目の前に突き付けられたものを見て途端に身を震わせた。
「えっ、こ、こんな太いのか……?」
「生き物を引き摺り出すんだ。それなりのパワーがいる。先端にはカメラも付けているしね」
「い、いや、でも、入んねぇだろ、こんな……」
「入るよ。さっき同じくらい拡げたから」
助手は側面から伸びる多関節アームをクネクネと自在に動かして見せた。それは子供の腕くらいの太さがあり、透明なチューブに金属製の本体が包まれている。その先端は人の手のように枝分かれしており、物を摘むことができるようだ。
「心の準備はできたかい? 力を抜いて」
「む、無理、そんなの……」
「それならさっきの器具を使うけど」
「いいい嫌だ!! わかった、わかったから、ちょっと待て」
アランが深呼吸しようと息を吐いたその瞬間、セルゲイは助手を操作し、ずぶりとアームを突き挿した。
「ぬあぁああ?! おまっ、だからいきなりっ……!!」
「声を掛ければ力むだろう。もう入ったよ」
元の窄まりに戻っていたアナルは、機械の腕により再び押し拡げられる。容赦なく奥深くを目指すそれに内側へと引き攣られた入り口は、もはやヒクつくこともできない。
「あっ、アッ、や、やめ、ストップ……!!」
「抵抗しないって言っただろう?」
「うぅっ……んっぐっ……」
アームの関節部分は僅かに膨らんでおり、それが腫れ上がった前立腺をゴリゴリと刺激する。アランは自らの腕を噛んで声を押し殺し、セルゲイは助手の上部に取り付けられたモニターを見ながら魔物を探す。
「……お、いた。暗くて色はわからないけど普通のスライムに見えるなぁ。こんなに小さいなら幼体か? スライムは分裂して増殖するが……」
「んっ……いいからっ、早くっ……取ってくれっ」
「そう慌てるなよ。ヒトの直腸にはいくつかヒダが付いてるし、そう簡単に奥へは行かないよ」
焦点の合わないカメラを前後に動かすたび、敏感な箇所が機械によって擦られる。
「それにしても、なぜこのスライムは君の体に居着いたんだろう。体温が気持ちいいのかなぁ。あぁ、カメラ越しじゃなくて直接見たい」
「……ん゛ん゛ッ!!」
少しでも明るさを確保しようとロボットアームの先端が体内を拡げた時、アランは限界を悟った。痛みはなかったが、羞恥心と圧迫感、それに不思議と沸き起こる性的快楽が脳内をぐちゃぐちゃに掻き混ぜるような気がして、モニターに夢中になっている幼馴染に助けを求める。
「おいっ、セルゲイっ……!! もういいだろ?! お願いだ、早くっ……」
「ん〜? わかった、わかった。今捕まえるよ」
「ぅあっ……あっ、あぁあっ!!」
大きく先端部を開いたアームが奥深く入り込み、アランは思わず腰を引いて逃げようとした。しかし、すっかりそれを咥え込んだ状態ではその動きに意味はなく、柔らかい肉穴は否応なしに抉られていく。
「あっ、あぁっ……も、むり……くるし……」
「よし、掴んだ。慎重に引き抜こう。そこ押さえてて」
「ひぐ、やっ、ぅあっ……」
内側からアームに引き摺られそうになった腰を、助手から伸びる別の腕が掴んだ。日頃の鍛錬により磨かれた肉体も機械の力には敵わず、剣士は見事にされるがままだ。
「あっあっ、それ、も、やめっ……ンンッ」
何度も擦られた入り口はジンジンと熱を持ち、単調なペースで揉まれ続ける精嚢はペニスの先端から精液を溢れさせる。
「もう後少しだ」
「はっ、ぁ、ん……セル、げ……」
アランの爪がカリッと検査台を引っ掻いたその時、ロボットアームの先端部――スライムを掴み、小さな関節を横に張らせた硬い合金製の指先――が、刺激を求めて膨らんだ前立腺をゴリッと強く押し上げて乗り越えようとした。
「アッ、やっ……ん゛んンンッ〜〜〜〜!!」
絶叫に近い悲鳴が響き、セルゲイはモニターから顔を上げた。鞭を打たれた馬のように跳ねる幼馴染が目に入り呆気にとられ掛けたが、何かを察して再び視線を落とす。
「あっ、まずい、待て待て待て待て!」
モニターに映し出されていたのは、何も掴んでいないアームの先端と、奥の暗闇へと逃げ出す小さなスライムの姿だ。どうやら、絶頂に伴う強い収縮のせいで変な圧力が掛かり、スライムを離してしまったらしい。
「はっ、あっ、あぁんっ……あぁっ、おく、はいっ、入って……」
アームは抜けたはずなのに、崩れ落ちたアランの腹がポコっと一瞬だけ不自然に膨らんだのを見て、セルゲイは冷や汗がこめかみを伝うのを感じた。
「まずい。これは……どこまで入った? アラン。答えられるかい? 君の感覚では――」
「……せ、セリョージャ」
汗が涙か、濡れたまつ毛の下で、虚ろなエメラルドグリーンの瞳が揺れている。セルゲイはぐったりとした様子の幼馴染の方へと一歩足を踏み出し、驚いたように瞬きを繰り返した。
「今、君、何て言った?」
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