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第6話 ※
ソファで目覚めると、志津真は主寝室へ行こうと立ち上がった。が、その隣の、普段は使わないゲストルームのドアが薄く開いていることに気付く。
ドアに近付き、一瞬の躊躇があるが、思い切ってドアを押した。
「お帰り。今日は早かったんだね」
ドアを開けると左側にシングルベッドがある。
そこに座って、柔らかな笑顔で迎えてくれたのは、志津真が忘れられない年上の美しい人だった。
「ルイ…」
その名を呼ぶと、彼は嬉しそうに両手を伸ばして志津真を望む。その求めに応じるように志津真も彼と並んでベッドに座り、彼を怯えさせないように、ソッと抱きしめた。
「会いたかった…」
ルイが想いのこもった熱い声で、志津真の耳元で囁いた。それは志津真も同じ気持ちだ。
まるでそれを知っていたように、ルイはしっかりと志津真を抱き締め、労わるように優しく頬に口づけた。
気が付くとルイは赤いシルクのガウン1枚を身に纏っていただけだった。そのベルトに手を掛け、充分に意識的に誘惑してくる。
「ねえ、もう待てない…」
ルイの誘惑を断る強さも理由もない志津真は、そのラッピングリボンに似た赤く光沢のあるガウンのベルトを引き抜いた。
「あ…」
どちらが上げた声なのか分からない。同時に、驚きと感動に声を上げたのかもしれない。
スルリと落ちるベルトと同調するように、赤いガウンがルイの肩から滑り落ちる。中から現れたのは、あの頃のままの白く、柔らかで、しっとりと手になじむ、人好きのする淫猥な肌だ。
それを確かめるように、志津真はゆっくりとルイの首筋から胸にかけて掌を這わせる。その動きに身を任せ、うっとりとした様子でルイは志津真の肩に頭を凭せ掛けた。
懐かしい、忘れ得ぬ匂いがする。花のような、果実のような甘く誘惑的なルイのカラダの匂いだった。
「ルイ…」
志津真の呼びかけに、すぐにその意図を悟ってルイがその美貌を持ち上げた。その赤く濡れた唇を、飢えたように志津真が貪る。実際、飢えていたのかもしれない。この唇が欲しくて、欲しくて眠れぬ夜を何度も過ごした。唇を吸い、舌を絡め、ほしいままに、志津真はルイを味わった。
「…はぁ…っ…」
息もつかせぬ要求が続いた後で、ようやく息を継ぎ、目が合うと今さら恥ずかしそうに微笑み合った。
ルイが、スイと軽く押し返しただけで志津真はベッドの上に倒れ込む。自主的に志津真がシャツのボタンを外し始めると、馬乗りになったルイが志津真のスラックスのベルトを外しながら、クスクスと笑った。
志津真は嬉しかった。これほどにルイが楽しそうに自分を求めてくれることが。
「いい?」
無邪気な眼差しで、ルイが志津真に問いかける。拒む理由も無く、志津真が頷くと、ルイは志津真の前を開き、下着をずらせて内包されていたものを丁寧に取り出した。
「…無理は、…するな、よ?」
ルイを思いやる余裕を見せながらも、志津真の息と心拍は上がりっぱなしだ。志津真の優しい配慮に、ルイも美しく微笑み、それから一転して悪戯っぽい小悪魔的な笑みに変わると、ゆっくりと手にしたものに、その濡れた赤い舌を近づけた。
「っん…!」
ルイの巧みさに志津真の腰も引ける。だがそれをルイが執拗に追い、絡め獲り、追い詰め、そして全てを受け止める。
「ン…っ、る、ルイ!」
汗に濡れ、しっとりしたルイの黒髪に指を絡ませ、志津真は今宵最初の精を放った。
「志津真!志津真…ぁ…」
志津真のほんの一部を自分の中に取り込んだルイは、まるで火が付いたように志津真を求めた。
志津真の上に伸し掛かり、逞しく、艶やかな肌に手を這わせ、唇を押し付けた。
子供のように夢中なルイに、志津真はソッと手を伸ばし、引き締まった腰から下に掛けて触れていく。
「あ、んっ!」
そして双丘の奥の秘密の場所に指が触れると、ルイは声を上げ、背を反らした。
重なり合った前が、反応しているのが感じられた。このまま進んでも良いのだと判断した志津真は、ゆっくりとその場所を解し始める。
上体を起こし、擦り付けるように腰を使う奔放なルイに魅せられながら、後ろの蕾を緩め、紅潮した胸にひと際赤い粒を摘まんで刺激した。
「っは…はぁ…あ、ん…」
恥じらいも無く、ルイは妖しく乱れ、志津真を煽る。いつしかルイの中には志津真の指が3本も入り込み、拡張を試みている。
「き、来て…!志津真、早く、来て…」
蕩けるような顔をして、ルイが我慢できずに志津真を要求する。その濃艶さ、猥褻さに志津真の理性も呑み込まれてしまい、もう何も考えられない。
「…ルイっ!」「…っ、志津真ぁ…あ」
2人は互いを深い所で求め合い、ついに1つになった。
「愛してる!…愛してるんだ、ルイ!」
我を忘れて志津真がルイを突き上げる。それに合わせるように身をくねらせるルイもまた妖艶で美しかった。
「もう行かないで…。俺を置いて逝かないでくれ…」
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